クボタのコンバインに乗っていて気になった、この会社の「世界3位」の秘密

クボタのコンバインに乗っていて気になった、この会社の「世界3位」の秘密 - 加藤智也ノートのアイキャッチ画像 テーマ株・セクター

今日、家の田んぼで稲刈りをしてきた。うちで使っているのはクボタのコンバインなのだが、運転席に座って作業をしながら、ふと妙なことが気になり始めた。稲を刈り取りながら脱穀まで自動でこなすこの機械、相当な機能が詰まっているはずなのに、車と比べたら売れる台数は桁違いに少ないニッチな乗り物だ。それなのに、なぜそこまで法外な値段にならずに成立しているんだろう。気になって調べてみたら、想像していたのと少し違う答えにたどり着いた。

実際に使っているクボタのコンバインSR-J5

うちで使っているクボタのコンバイン「SR-J5」

コンバインは「ニッチで高額」なのに、なぜ会社として成り立つのか

コンバインは規模や機能によって価格帯が広く、家庭用に近い小型のものから、サイズや装備によっては1,000万円クラスのものまである。一方で、年間の販売台数は乗用車とは比較にならないほど少ない。普通の工業製品なら、量産効果が効きにくい分だけ割高になりそうなものだ。それでも農機メーカーとして事業がしっかり成立しているということは、「安く作る特別なノウハウ」を持っているというより、何か別の仕組みがあるのではないかと考えて、クボタについて少し調べてみることにした。

クボタのコンバイン後方、SKY ROAD Joycomのロゴ

後方から見た同じ機体。「SKY ROAD Joycom」のロゴが見える

世界の農機市場、実際の順位はどうなっているのか

調べていて最初に戸惑ったのが、「クボタは世界何位なのか」という問いに、情報源によって答えが微妙に違うという点だった。ある集計では、2024年の世界農機市場シェアは1位ディア・アンド・カンパニー(ジョンディア、17.68%)、2位クボタ(10.22%)、3位CNHインダストリアル(7.79%)という順位になっている。一方で、クボタ自身の農機事業について「世界3位グループ」と表現している資料もある。この違いは、集計対象を「トラクター・コンバインなど農業機械全体」で見るか、「大型農機を含む特定セグメント」で見るかといった、集計方法の違いによるもののようだ。どの数字を採用するにせよ、ジョンディア・CNHと肩を並べる「農機メジャーの一角」であることは共通している。

ちなみに首位のジョンディアは売上高3兆円台後半という規模感で、クボタの農機事業(約2兆円)とはまだ差がある。ただクボタはこの十数年で急速にその差を詰めてきた企業でもある。2011年度の売上高は1兆5,869億円ほどだったが、そこから大型農機への参入を本格化させ、2023年度には連結売上高が初めて3兆円を突破した。

米国では「稲作」ではなく「芝刈り」で勝った

この「ニッチの面的な積み重ね」を象徴するのが、北米での展開だ。クボタは1969年に米国市場へ参入したが、日本で手がけていた稲作向けの小型トラクター(15〜50馬力)は、数百馬力クラスが必要な米国の大農場には合わなかった。そこでクボタは発想を転換し、農業用ではなく住宅の芝刈り向けに小型トラクターを提案する。個人の庭作業という、当初想定していなかった需要を取り込んだ結果、1980年代後半にはシェア40%を獲得。その後は果樹栽培や酪農向けの中型トラクターにも展開を広げ、現在も米国の小型トラクター市場でシェア首位を保っているという。「稲作機械メーカー」という枠に自分を縛らず、勝てる市場を自分たちで見つけ直したという点が、素直にすごいと思った部分だ。

タイでは現地生産と自前の金融まで手がける徹底ぶり

もう一つ印象的だったのが東南アジアでの展開だ。タイの稲作向けトラクター市場にもいち早く参入し、トップシェアを握っている。1980年から現地企業と組んで農業用エンジンを現地生産し、部品から最終製品まで一貫生産する体制をタイ国内に整えたという。さらに、他社に先駆けて金融子会社まで設立し、農家の土地や作物の価値を確かめる与信調査も自前でこなしているというから徹底している。北米でも東南アジアでも、生産量を伸ばしやすいOEM(他社ブランドでの生産受託)には頼らず、自社ブランドでの販売網・保守拠点を自前で構築してきた。近年はインド勢の台頭もあるというが、「ブランドが最大の資産で、簡単にはコピーできない」というのが現地責任者の見方のようだ。

海外売上比率は約22年で30%から80%へ

この積み重ねの結果として、クボタの海外売上比率は約22年前の30%程度から、直近では80%程度まで上昇している。日本国内だけを見ればコンバインもトラクターも確かにニッチな機械だが、世界中の「ニッチ」を丁寧に積み上げていった結果、気づけば農機メジャーの一角になっていた、という流れのようだ。「安く作るノウハウ」を探していたつもりが、実際に見つかったのは「小さな市場を諦めずに拾い集める」という、地道な戦略の積み重ねだった。

実は「無人化」でも世界の最前線にいる

今回調べていて一番驚いたのが、自分が乗っているような有人のコンバインの先に、クボタがすでに「無人農機」の実用化を進めているという事実だった。クボタは2024年、世界で初めて人が搭乗することなく自動運転で米や麦の収穫作業を行えるコンバインを市場投入し、トラクタ・コンバイン・田植機のすべてで無人運転仕様をラインアップ済みだという。

さらに2026年8月には、遠隔監視に対応した無人自動運転トラクタを市場投入したと発表している。国産トラクタでの製品化としては初めてで、使用者が現場を離れていても、遠隔監視のもとで農作業を任せられる仕組みだ。2027年4月には後継の新型シリーズ(遠隔監視タイプ・有人自動運転タイプなど5機種)を投入し、初年度100台の販売を目指すという。遠隔監視タイプの価格は1台2,000万円前後とされており、コンバイン以上にニッチで高額な世界だが、農業の担い手不足という切実な課題に対する解として位置づけられている。自分が今日座っていた運転席は、いずれ「誰も座らない」時代が来るのかもしれないと思うと、少し不思議な気持ちになった。

直近の業績も大幅増益、株価も年初から上昇基調

足元の業績は好調だ。2026年12月期の中間決算(1〜6月)は、売上高1兆6,903億円(前年同期比+16.2%)、営業利益2,356億円(同+64.7%)、親会社帰属の中間純利益1,737億円(同+87.8%)と、大幅な増収増益になった。これを受けて通期予想も、売上高3兆2,800億円(前回予想比+4.1%)、営業利益4,000億円(+33.3%)、純利益2,890億円(+37.6%)と上方修正されている。

株価も2026年8月時点の2,717円から、9月には3,000円台を回復する場面が見られた。予想PERはおおむね12〜15倍前後、配当利回りは2%程度で推移しているようだ。世界中で農業の機械化・自動化ニーズが高まる中、農機メジャーとしてのポジションが着実に業績にも表れてきている印象を受ける。

稲刈り前と稲刈り後の田んぼの比較

稲刈り前(左)と稲刈り後(右)の田んぼ

投資家目線:稲刈りの実体験から気になった株

今回のきっかけは、実際に自分がクボタのコンバインに乗って稲刈りをしていて感じた素朴な疑問だった。「これだけの機能を持つニッチな機械が、なぜ成立しているのか」という現場感覚から調べ始めて、世界中でニッチ市場を積み重ねる戦略や、海外売上比率8割という実態、さらには無人農機という次のフェーズにまで足を踏み入れていることにたどり着いた。正直なところ、まだクボタ株は保有していない。ただ、実際に機械を使う立場として肌で感じた「この会社は意外とすごいのでは」という直感が、調べれば調べるほど裏付けられていったので、タイミングを見て購入を検討したいと思っている。

まとめ

コンバインという身近な機械から始まった疑問が、調べてみると「ニッチ市場の面的な積み重ね」と「無人化という次の一手」という、地に足のついた成長戦略の話につながった。世界シェアの順位は集計方法によって2位とも3位とも言われるが、いずれにしてもジョンディア・CNHと並ぶ農機メジャーであることに変わりはない。派手さはないが、一つひとつの市場で勝ちを積み重ねていく姿勢は、投資先を選ぶうえでも参考になる視点だと感じた。

💡 補足

・クボタの祖業は1890年創業の鋳物業で、そこから農機・建機・水環境インフラなど幅広い事業に展開してきた
・OEM(相手先ブランドによる生産)とは、他社のブランド名で製品を製造すること。クボタは北米・東南アジアで自社ブランドにこだわり、販売網や保守体制も自前で構築してきた
・世界シェアの順位は集計対象(農業機械全体か、特定セグメントか)によって資料ごとに差がある。本記事では複数の情報源から分かる範囲を併記した

📊 加藤智也の分析メモ

今回は珍しく、ニュースではなく自分の稲刈り体験がきっかけになった記事だった。実際に機械を操作しながら「この会社どうなってるんだろう」と感じた素朴な違和感を調べてみると、思わぬ形で投資のヒントにつながることがあると実感した。さらに調べを進めるうちに、自分が座っている運転席の先に「無人化」という次のフェーズがすでに実用化段階まで来ていると知り、素朴な疑問から始まった割には随分遠くまで連れて行かれたな、という感覚がある。日常の中の小さな引っかかりを、もう少し大事にしてみようと思う。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。企業情報・業績数値・株価水準は2026年9月時点で公表・報道されている内容に基づいており、今後変更される可能性があります。投資判断はご自身の責任で行ってください。

収穫直前の稲穂

収穫直前の稲穂

コメント

タイトルとURLをコピーしました