住宅ローン固定10年が「4%」の時代に——長期金利30年ぶりの高水準、11年目で変動に移った私が考えたこと

生活とお金

11年前、私が家を買ったときの住宅ローンは「10年固定0.9%」だった。住宅メーカーと銀行が組んだ提携ローンで、最初の10年間は特別に金利を優遇してもらえる商品だ。当時はそれが特別に安いとも思わず、「まあそんなものか」くらいの感覚で契約した。

そして2026年10月。大手銀行の住宅ローン「固定10年」の最優遇金利は、みずほ銀行の3.6%から三井住友信託銀行の4.965%まで。三井住友銀行はちょうど4%だ。11年前の私の金利の4倍以上になっている。今回は、なぜここまで固定金利が上がったのか、そして変動金利の人は安心していいのかを、当事者として調べてみた。

10月の住宅ローン金利、何が起きたか

9月30日に発表された大手5行の10月の住宅ローン金利は、固定10年がそろって引き上げられた。前月からの上げ幅は0.12〜0.77%だ。

銀行 固定10年(最優遇) 変動(最優遇)
三菱UFJ銀行 3.75% 据え置き
三井住友銀行 4.0% 据え置き
みずほ銀行 3.6% 1.275%(引き上げ)
りそな銀行 4.205% 1.25%(引き上げ)
三井住友信託銀行 4.965% 1.7%(引き上げ)

変動金利も3行が0.25〜0.62%引き上げ、これで大手5行すべての変動金利が1%を超えた。固定と変動の差は、銀行によっては3%近くまで開いている。

固定金利は「日銀」ではなく「市場」が決めている

ここで多くの人が勘違いしやすいポイントがある。住宅ローンの金利はすべて日銀が決めている、と思われがちだけど、実は固定と変動では金利を動かす「スイッチ」が違う。

  • 変動金利:銀行の短期プライムレートに連動する。短期プライムレートは日銀の政策金利の影響を強く受ける
  • 固定金利:長期金利(10年国債の利回りなど)に連動する。長期金利は日銀が直接決めるのではなく、債券市場で売り買いされて決まる

その長期金利が、いま歴史的な水準まで上がっている。東京市場では新発10年国債の利回りが一時3.115%をつけ、1996年8月以来、約30年ぶりの高水準になった。さらに米国では、30年国債の利回りが9月29日に一時5.6%を超え、2002年以来の高水準を記録した。米国の利上げ観測で世界的に債券が売られ、その波が日本の長期金利にも及んでいる。

つまり、日銀が何もしなくても、固定金利は勝手に上がることがある。今回の固定金利の上昇の「犯人」の一部は、太平洋の向こう側にいるわけだ。

じゃあ変動金利なら安心か?

変動金利は固定より3%近く低い。それなら変動が正解かというと、そう単純でもない。日銀は2026年6月に政策金利を0.75%から1.0%へ、9月にはさらに1.25%へと引き上げた。約31年ぶりの水準だ。この利上げは、変動金利にも時間差で効いてくる。

多くの銀行では、変動金利の見直しは年2回(4月と10月)で、実際の返済額に反映されるのはさらにその数カ月後になる。住宅ローン比較サイトの解説によると、6月の利上げ分は10月1日の基準金利見直しで反映され、返済額が変わるのは2027年1月以降。9月の利上げ分は2027年4月の見直しで反映され、返済額に表れるのは2027年7月以降になる見込みだ(銀行や契約によって異なる)。

つまり、変動金利の人にとって、今回の利上げの影響が本格的に家計に届くのは来年になる。今は「まだ痛みを感じていないだけ」という状態の人も多いはずだ。

「5年ルール」と「125%ルール」の落とし穴

変動金利には、急な負担増を和らげるためのルールがある銀行が多い。

  • 5年ルール:金利が上がっても、毎月の返済額は5年間変わらない
  • 125%ルール:5年ごとに返済額を見直すとき、新しい返済額は前の1.25倍までに抑えられる

一見ありがたいルールだけど、返済額が変わらない間も金利は上がっているので、返済額のうち「利息」の割合が増え、「元本」の減りが遅くなる。払っても払っても元本が減らない、という状態になりうるわけだ。しかも、ネット銀行を中心にこのルールを採用していない銀行もある。自分のローンにこのルールがあるかどうかは、一度確認しておいた方がいい。

金利が上がると返済額はいくら変わる?

借入額3,000万円、35年返済(元利均等・ボーナス払いなし)のモデルケースで、金利ごとの月々の返済額を計算してみた。

金利 月々の返済額 35年間の利息の合計
0.9%(11年前の私の固定金利) 約8万3,300円 約498万円
1.25%(今の大手行の変動並み) 約8万8,200円 約705万円
1.7% 約9万4,800円 約983万円
2.2% 約10万2,500円 約1,304万円
3.6%(固定10年の下限) 約12万5,700円 約2,281万円
4.0%(固定10年・三井住友銀行) 約13万2,800円 約2,579万円

0.9%と4.0%では、月々の返済額で約5万円、35年間の利息の合計で2,000万円以上の差がつく。同じ3,000万円を借りても、金利しだいで「家がもう1軒買えそうなくらい」の差が利息だけで生まれる計算だ。

すでに借りている人の例も見ておく。残高2,000万円・残り24年の場合、金利1.2%なら月々約8万円。これが1.7%になると約8万4,600円、2.2%なら約8万9,400円になる。0.5%上がるごとに、月4,600〜4,800円ほど増えていくイメージだ。

加藤智也の視点:11年目で「変動」に移った当事者として

冒頭に書いたとおり、私のローンは最初の10年が固定0.9%で、11年目の今は変動金利に切り替わっている。この前確認したときは1.2%くらいだったと思うけど、正直に言うと、ここ最近はちゃんと確認できていない。今回の記事を書きながら、少し上がっているかもしれないと思い始めている。

今回調べてみて一番大事だと感じたのは、固定期間が終わったあとの金利がどう決まるか、という点だ。提携ローンや固定期間選択型のローンでは、固定期間が終わると「その時点の店頭金利から、契約で決めた優遇幅を引いた金利」になるのが一般的だと言われる。最初の10年の金利だけを見て契約すると、11年目以降の優遇幅をよく覚えていない、ということが起きやすい(まさに私のように)。

同じように、これから固定期間が終わる人や、すでに変動に移った人は、次の3つを一度確認しておくと安心だと思う。

  • 今の適用金利は何%か(返済予定表や銀行のアプリで確認できる)
  • 店頭金利から何%の優遇を受けているか、その優遇は完済まで続くのか
  • 5年ルール・125%ルールがあるかどうか

私もこの記事を書き終えたら、真っ先に自分の返済予定表を開くつもりだ。住宅ローン控除の仕組みについては、住宅ローン控除の基礎の記事にまとめている。

金利上昇で得をする人、困る人

住宅ローン金利の上昇は、借りる側にとってはつらい話だけど、得をする側もいる。お金を貸す銀行は、貸出金利が上がれば利ざやが広がりやすい。日銀の利上げで地方銀行の利益がどうなっているかは、地銀の記事で詳しく書いた。

一方で、住宅の買い手が慎重になれば、ハウスメーカーや不動産会社には逆風になる。また、預金金利も少しずつ上がっているので、ローンのない家庭や貯金が多い家庭にとっては、利息が増えるというプラス面もある。金利上昇は、同じニュースでも立場によって真逆の意味を持つ。

この先どうなる? 考えられる3つのシナリオ

  • シナリオ1:長期金利が高止まり 米国の金利が高い状態が続けば、日本の長期金利も下がりにくく、固定金利は4%前後で推移する
  • シナリオ2:米国の金利が落ち着き、長期金利が一服 米国のインフレが落ち着いて利上げ観測が後退すれば、固定金利の上昇も一休みする可能性がある
  • シナリオ3:日銀の利上げで変動との差が縮まる 日銀が利上げを続ければ、変動金利が上がって固定との差が縮まり、「どちらを選ぶか」の判断がまた変わる

固定と変動のどちらが正解かは、誰にも分からない。ただ一つ言えるのは、金利のスイッチは日本の中だけでなく、海の向こうにもあるということだ。

皆さんはどうしましたか?

私と同じように、固定期間が終わるタイミングを迎えた人、もうすぐ迎える人も多いと思う。固定期間が終わったとき、そのまま変動に移りましたか? それとも、もう一度固定で借り換えましたか? そのときに決め手になったことがあれば、ぜひコメントやX(@ktn12012009)で教えてください。私もちょうど自分の金利を確認し直すところなので、皆さんの経験はとても参考になります。

💡 補足

・「最優遇金利」は、銀行が提示する金利のうち最も低い水準。審査結果や条件によって実際の金利は変わる
・短期プライムレートは、銀行が信用力の高い企業に1年以内でお金を貸すときの最も優遇した金利で、変動金利の基準になる
・固定期間選択型は、決めた期間(3年・5年・10年など)だけ金利が固定され、期間終了後は変動か、再び固定かを選ぶ仕組み
・試算は元利均等返済・ボーナス払いなし・金利一定とした概算で、手数料や保証料は含んでいない

📊 加藤智也の分析メモ

11年前の「10年固定0.9%」は、今振り返るとかなり恵まれた条件だったと思う。当時は金利が上がる未来をほとんど想像していなかった。住宅ローンは、契約した時点の金利ばかりに目が行きがちだけど、本当に大事なのは「その金利がいつまで続き、その後どうなるのか」の方だと身をもって感じている。金利が動き出した今、自分の返済予定表を一度見直すことが、どんな投資よりも確実なリターンになるかもしれない。

※本記事は2026年10月1日時点の報道・各銀行の公表情報をもとにした情報提供を目的としており、特定の住宅ローン商品を推奨するものではありません。金利は審査結果や契約条件によって異なり、今後変動する可能性があります。借り入れ・借り換えの判断は、各金融機関にご確認のうえご自身の責任で行ってください。

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