日銀利上げ観測8割なのに、円安が終わらない本当の理由

日銀利上げ観測8割なのに、円安が終わらない本当の理由 - 加藤智也ノートのアイキャッチ画像 マクロ・資産防衛

「日銀が9月に利上げするのはほぼ確実」——最近そんなニュースをよく見かける。それなら円は買われて、少しは円高に振れてもよさそうなものだ。ところが実際のドル円を見てみると、154円前後で推移していて、正直「あれ、思ったより円高になっていないな」と拍子抜けした。

織り込みは8割どころか、一時100%超まで

調べてみると、市場の織り込みは想像以上に進んでいた。OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)市場での日銀9月利上げ確率は、8月下旬時点で8割程度だったのが、9月に入ってからは一時100%を超える水準まで上昇していたという。つまり「利上げするかどうか」はほぼ決着済みで、市場の関心はすでに「その先、年内にもう1回あるか」というレベルに移っている。9月17〜18日の金融政策決定会合を前に、これだけ織り込みが進んでいるにもかかわらず、円安は止まっていない。

28年ぶりの協調介入も、円安の”土台”までは変えられなかった

背景を振り返ると、7月末には1ドル164円に迫る約40年ぶりの円安水準まで進んでいた。これを受けて7月30〜31日、日本単独の介入に続いて米国も加わる形で、円買い方向としては28年ぶりとなる日米協調為替介入が実施された。1日の介入規模は8.45兆円と過去最大級で、ドル円は164円台から157円台まで一気に押し戻された。

ただ、その効果は長続きしなかった。介入から1ヶ月半ほど経った今、ドル円は153〜156円台のレンジに戻ってきている。過去の介入も効果が1.5〜2ヶ月ほどで薄れる傾向があるとされており、今回もそのパターンをなぞっているように見える。

利上げも介入も「単発の一手」にすぎない

ここで整理しておきたいのは、為替を動かす力の”強さ”の違いだ。為替介入は、実弾で相場を一時的に押し戻す「カンフル剤」のようなもので、即効性はあるが持続性は乏しい。一方、利上げは金利差そのものを縮める「体質改善」に近い効果を持つはずだが、1回の利上げ(0.25%幅)程度では、これまで積み上がった日米の金利差そのものを覆すには力不足なのだろう。市場がすでに「利上げはほぼ確実」と織り込んでいるということは、実際に利上げが決定されても、それ自体は”サプライズ”にならず、為替への追加インパクトは限定的になりやすいという事情もありそうだ。

米国側の事情も無視できない。米国のインフレ高止まりを背景にした金利高・ドル買い需要が根強く、日本の利上げ観測と綱引きになっている構図だ。日銀がいくら利上げに動いても、米国側の金利水準がなかなか下がらなければ、金利差という”土台”自体はそう簡単には動かない。

円安が続くと、資産のどこにプラス・マイナスが出るか

自分は米国株・米国ETF(VOO、VT等)を保有しているので、円安局面では円換算の評価額がその分押し上げられる恩恵を受けている。一方で、生活者としては輸入品やガソリン、海外旅行の費用が高止まりする痛みも同時に感じる。同じ「円安」でも、資産の持ち方によって受け取り方がまったく違う、というのを改めて実感する場面が多い。

まとめ

「利上げ観測が強まった」というニュースだけを見ていると、てっきり円高に向かうものと思い込みがちだが、実際には金利差という根本的な土台が残っている限り、単発の政策イベントだけで為替のトレンドを変えるのは難しい。今後については、日銀が利上げを重ねて金利差が縮小していくシナリオ、利上げ自体は実施されても小幅にとどまり円安が高止まりするシナリオ、逆に利上げが見送られて失望から円安が再燃するシナリオ、複数の可能性が考えられ、どれか一つに断定するのは早計だと感じている。

💡 用語の補足

「OIS市場」とは、将来の政策金利の見通しを反映して取引される金融派生商品の市場のことで、その価格から「市場が政策金利の変更をどれくらいの確率で織り込んでいるか」を逆算できる。為替介入は、政府・中央銀行が保有する外貨(または自国通貨)を市場で売買し、為替レートに直接働きかける政策手段で、即効性はあるが、金利差など為替を動かす根本的な要因が変わらない限り効果は一時的になりやすいとされる。

📊 加藤智也の分析メモ

今回改めて感じたのは、「利上げ観測が強まった」というニュースの見出しだけを鵜呑みにせず、それが為替市場でどれだけ既に織り込まれているかまで確認する必要があるということ。8割どころか一時100%を超えて織り込まれていたと知って、逆に「もう出尽くし材料に近いのでは」という見方もできると気づいた。ニュースの”方向”だけでなく”織り込み度合い”まで見ることの大切さを実感した一件だった。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨・金融商品への投資を推奨するものではありません。為替水準・金融政策見通し等は2026年9月時点の情報に基づいており、今後変動する可能性があります。投資判断は自己責任で行ってください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました