最近、米国株関連のニュースを追っていて「あれ、VIXって最近全然騒がれてないな」と気づいた。欧州と中東で戦争が続き、FRBは3年ぶりに利上げをして、米国では中間選挙が近づき、連邦債務は4兆ドルを超えた。AIの開発者自身が「AIが人類を脅かしかねない」とまで発言している。これだけ不安材料が並んでいるのに、市場が全然怖がっていないとしたら、それはそれで気になる話だと思った。
VIXは14台、2026年の最安値を記録
VIX(CBOEボラティリティ指数)は、S&P500が今後どれくらい大きく動くと予想されているかを、オプション取引の価格から逆算した指数だ。過去30年以上の平均は20で、この水準を超えると「市場が不安を感じ始めている」目安とされる。
2026年9月19日時点のVIXは14.81。さらに遡ると、8月17日には14.18まで低下し、2026年の最安値を記録している。今年3月27日には31.65まで跳ね上がっていたことを考えると、わずか5カ月で50%以上も下落したことになる。株価が最高値圏を更新するなか、「恐怖指数」だけが静かに眠っているような状態だ。
なぜここまで下がったのか
VIXがここまで低下した背景には、企業業績の改善、インフレ圧力の緩和、金融引き締めに対する懸念の後退があるとされている。海外の市場関係者の間では「ファンダメンタルズの改善に対する正常な反応」という見方も出ている。理屈のうえでは筋が通っている説明ではある。
ただ、自分が引っかかったのは「理屈は通っているのに、材料は不穏なままだ」という点だ。2つの戦争、利上げ、中間選挙、財政悪化、AIリスク――これだけ材料が揃っていて、なぜ市場はここまで落ち着いていられるのか。VIXが低いこと自体は「悪材料が本当にないから」なのか、それとも「悪材料を織り込みきれていないだけ」なのか、この違いは意外と大きい。
静かな相場ほど、身構えておきたい理由
VIXが低い時期は、市場が油断しているサインだと解釈されることもある。実際、8月中旬から10月中旬にかけては季節的に相場が荒れやすい時期とされていて、過去の中間選挙イヤーでは、この時期に平均7%前後の調整が入ったというデータもある。地政学リスク(中東情勢の緊迫化など)も燻り続けている。
「VIXが低い=安全」ではなく、「VIXが低い=次の値動きに備えるコストが今は安い」と捉えたほうが実用的かもしれない、と最近は思うようになった。
投資家目線:静かな相場での立ち位置
自分は米国株・米国ETFの比重が高いポートフォリオを組んでいて、HYGやJNKといったハイイールド債ETF、IGIBやVCITといった投資適格社債ETFも保有している。こうした資産は、ボラティリティが急上昇する局面では価格が大きく振れやすい。VIXが14台という「凪」の状態は正直居心地がいいが、居心地がいいときほど、含み益に安心しきって次の変動への備えを怠りがちになる、という自覚はある。
VIXが低いこと自体を悲観する必要はないと思う。ただ、「なぜ今VIXが低いのか」を自分なりに理解しておくことと、「この凪はいつまでも続かない」という前提を持っておくことは、分けて考えたほうがいいと感じている。
まとめ
VIXは2026年の最安値を記録し、株式市場は最高値圏にある。一方で、戦争・利上げ・選挙・財政・AIリスクといった不安材料は、消えたわけではなく、むしろ並んでいる状態だ。「恐怖指数」が静かだからといって、恐怖の種そのものがなくなったわけではない。指数が眠っている今のうちに、自分のポートフォリオがどの程度の値動きに耐えられるのか、一度確認しておいて損はなさそうだ。
💡 補足
・「VIX」はCBOE(シカゴ・オプション取引所)が算出するボラティリティ指数で、S&P500オプションの価格から市場が予想する将来の変動率を逆算したもの。数値が高いほど「大きく動く」と市場が予想していることを意味する
・「ハイイールド債」は信用格付けが低め(投資適格未満)の企業が発行する社債のことで、金利が高い代わりに価格変動リスクも大きい。VIXが急上昇する局面では、株式と同様に売られやすい資産とされる
📊 加藤智也の分析メモ
VIXが低いというニュースを見て「安心材料」だと素直に受け取りかけたが、並んでいる不安材料の数を数え直してみると、むしろ市場の落ち着きのほうが不思議に見えてきた。相場が静かなときほど、自分のポートフォリオが荒れた相場にどこまで耐えられるかを確認しておく、というのは地味だが大事な習慣だと思う。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の商品・銘柄への投資を推奨するものではありません。市場データは2026年9月時点の情報に基づいており、今後変動する可能性があります。投資判断はご自身の責任で行ってください。


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