NISAで積立をしている人に「あなたのポートフォリオ、どこの国の株が多いですか」と聞いたら、多くの人が「S&P500」か「オルカン(全世界株)」と答えると思う。自分もその一人だ。ただ、この「全世界株」という名前、実は少し誤解を招く。オルカンの中身は米国株が7割を超えていて、欧州株の比率はごくわずかしかない。つまり「全世界に分散しているつもり」でも、実態は米国への一極集中に近い。
そんな中、海外の投資情報を読んでいて「欧州株が米国株よりかなり割安に放置されている」という話が目に留まった。今回はこのテーマを、自分なりに数字を調べながら掘り下げてみたい。
バリュエーションを数字で比較する
まず予想PER(株価収益率)で見てみると、S&P500は現在およそ20倍。一方、欧州の主要企業で構成されるStoxx Europe 600指数は14〜15倍程度で推移している。複数の情報源を確認したが、おおむねこの水準で一致していた。
セクター別に見ても同じ傾向がある。金融セクターは米国が15.6倍程度に対し欧州は11.2倍程度、生活必需品(食品・飲料など)は米国22倍程度に対し欧州16.5倍程度、公益セクターは米国17.1倍程度に対し欧州13.8倍程度、という具合だ。業種を横に並べても、欧州株の方が2〜3割ほど割安な水準にあることがわかる。
なぜここまで差がついているのか
大きな理由の一つは、指数の構成比の違いだ。S&P500は時価総額の大きいハイテク企業(いわゆるAI関連銘柄)への集中度が高く、指数全体のおよそ40%をハイテクセクターが占めている。一方、欧州のStoxx Europe 600はハイテクの比率が10%程度にとどまり、金融・生活必需品・資本財など、幅広い業種でバランスよく構成されている。
米国株指数の割高感は、裏を返せば一部の巨大ハイテク企業への依存度の高さでもある。欧州株が相対的に割安なのは、単に人気がないというより、指数の中身がそもそも違うからという面が大きい。
「万年割安」で終わらない材料もある
欧州株はこれまでも「割安なのに上がらない」と言われ続けてきた歴史がある。ただ今回調べていて、単なる万年割安論では片付けられない材料も見つかった。
ウォール・ストリート・ジャーナルの記事によれば、Stoxx Europe 600構成企業の一株当たり利益(EPS)は、直近四半期で前年同期比18%増加したという。UBSの欧州株戦略責任者は、成長がAI関連や銀行株といった一部の銘柄だけでなく、より幅広い業種に広がってきていると指摘している。
加えて、ドイツが国防・インフラ分野に今後10年間で1兆ユーロ規模の財政支出を計画しているという情報も見つけた。これは近隣国にも波及効果が見込まれ、欧州の防衛・インフラ関連銘柄にとって中期的な追い風になりそうだ。単なるバリュエーションの歪みではなく、業績と政策の両面で欧州株を後押しする材料が揃いつつあるように見える。
円建てで見た場合、日本の投資家に何ができるか
為替の視点も無視できない。仮にドル安・ユーロ高の流れが進めば、円建てで欧州株に投資している場合、株価そのものの値上がりに加えて為替差益も期待できる。もちろん逆方向に動くリスクもあるので、為替は一つの変数として捉えておく程度でいいと思う。
日本から欧州株にアクセスする方法としては、純粋な「欧州株だけの投資信託」は選択肢が少ないのが実情だ。現実的には、SBI証券などのNISA成長投資枠や特定口座で、米国市場に上場している欧州株ETF(バンガードFTSEヨーロッパETFやiシェアーズMSCIユーロゾーンETFなど)を個別に購入する方法が、もっとも直接的なアクセス手段になる。
自分の場合はどうか
自分のポートフォリオを見返してみると、VT(全世界株ETF)やVXUS(全世界除く米国ETF)、WDIV(全世界配当株ETF)を保有しているので、これらを通じて欧州株にも間接的には分散投資できている。ただ、その比率はあくまで「全世界株の一部」でしかなく、欧州単体に厚みを持たせているわけではない。今回調べてみて、あえて欧州単体のETFを少し組み入れて、米国偏重のバランスを崩してみるのもアリかもしれないと感じた。すぐに動くかは別として、頭の片隅に置いておきたいテーマだ。
まとめ
NISAで「全世界株」や「S&P500」を積み立てていると、それだけで十分分散できている気になりがちだが、実態は米国株への依存度がかなり高い。欧州株が相対的に割安で、しかも業績や政策面の追い風も出てきているタイミングだからこそ、一度自分のポートフォリオの中身を国別に見直してみる価値はありそうだ。
💡 銘柄・企業の補足
Stoxx Europe 600は、欧州17カ国の主要企業600社で構成される代表的な株価指数。S&P500と同じように、金融・生活必需品・ヘルスケア・資本財など幅広い業種の企業が含まれている。バンガードFTSEヨーロッパETF(VGK)やiシェアーズMSCIユーロゾーンETF(EZU)は、いずれも米国市場に上場しており、日本の証券会社からも通常の外国株取引と同じ手順で購入できる。
📊 加藤智也の分析メモ
今回改めて感じたのは、「分散投資しているつもり」でも、実際には特定の地域や業種に偏っていることが意外と多いということだ。全世界株やS&P500は便利な選択肢だが、その中身を定期的に確認する習慣は持っておきたいと思う。欧州株については、業績の裏付けも出てきている今のタイミングは、少額からでも検討してみる価値があると感じている。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や投資信託・ETFへの投資を推奨するものではありません。株価収益率(PER)や業績データは執筆時点(2026年9月)の情報に基づいており、今後変動する可能性があります。投資判断は自己責任で行い、必要に応じて最新の情報をご確認ください。


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