「支給開始年齢が上がる」という静かな改悪が進んでいる
前回の記事では米国の社会保障基金の枯渇リスクを書いたが、今回はもう一段掘り下げた視点で年金問題を考えたい。それは「いつから年金をもらえるか」という支給開始年齢の問題だ。
海外のデータを調べると、フランス・ドイツ・英国・オーストラリアなど先進国の多くで、年金支給開始年齢が段階的に引き上げられている。フランスでは2023年に62歳から64歳への引き上げが強行され大規模なデモが起きたのは記憶に新しい。日本でも将来的に65歳から67歳、さらに70歳への引き上げが議論の俎上に乗っている。
「65歳まで働く計画」が崩れるリスク
私は現在40代会社員だが、「65歳まで働いて、あとは年金と投資で生活する」という設計でいた。しかし支給開始が70歳になれば、その間の5年分の生活費を自前で賄う必要が生じる。
仮に生活費が月25万円だとすると、65〜70歳の5年間で1500万円が必要だ。これは「老後2000万円問題」とは別に必要になる資金だ。つまり合計では3000〜3500万円規模の自助資金が求められる可能性がある。
こう計算すると、今やっているインデックス積立(毎月オルカンに10万円)の意味がより明確になる。複利で積み上げていく行為が、単なる「資産増加」ではなく「年金代わりのキャッシュフロー源」になりうるということだ。
対策の本質は「キャッシュフローを作ること」
支給開始年齢が上がっても困らない構造を作るには、元本を取り崩さずにキャッシュフローが得られる仕組みが必要だ。私がSPYD・VYM・JEPIなどの高配当ETFを積み上げているのも、この発想からきている。
理想は「年金がいつ始まっても生活できる配当収入の基盤」を60歳までに作ることだ。そのためには今から逆算して、配当・分配金を再投資しながら資産を積み上げる期間が必要だ。年金問題は「将来どうなるかわからない」から目を背けがちだが、「わからないから最悪のシナリオで準備する」という発想が一番堅実だと私は思っている。
私が「年金だけに頼らない」と決めたのは、こういった数字を知ってからだ。アメリカだけでなく、日本の公的年金も人口減少・少子化の影響で給付水準が下がることはほぼ確実視されている。だから今の積立を続けることに迷いはない。iDeCoとNISAを両方使い、毎月のオルカン積立を続けている。「年金が不安だから投資する」ではなく、「自分の老後を自分で設計する」という発想でやっている。
もちろん投資判断はご自身で。こういう視点があることを知っておくと、次の判断が少し変わるかもしれません。
・日本では現在65歳の年金支給開始年齢について、将来的な引き上げが社会保障審議会などで議論の対象になっている(決定事項ではない)
・フランスは2023年に62歳から64歳へ、英国は2028年までに66歳から67歳への引き上げが決定済み
5年分の生活費を自分で試算してみると、支給開始年齢の議論が一気に「自分ごと」になった。数字にしてみることで、漠然とした不安が具体的な準備目標に変わる感覚があった。
前編にあたる、アメリカ社会保障基金の話は別記事に書いている。(年金は信じるなの記事)


コメント