先日、あるメルマガを読んでいて「そういう仕組みが存在したのか」と少し驚いた。
「エンジェル投資家」というと、シリコンバレーのコネクションを持つ人間が7万5000ドルのチェックを書く——そんなイメージがある。少なくとも私にはあった。
だが、2012年にアメリカで成立したJOBS ActのTitle III「CROWDFUND Act」という法律が、その前提を変えていた。
一般投資家が上場前のスタートアップに出資できる時代
「Reg-CF(Regulation Crowdfunding)」という名称のこの制度、2016年から実際に施行されている。
仕組みはシンプルだ。SEC(米証券取引委員会)に登録された投資ポータルを通じて、一般投資家——非認定投資家も含む——が未上場スタートアップに直接出資できる。最低金額は$100から、という案件もある。
現在、こうしたポータルが米国に約55サイトある。ECサイトで商品を買う感覚で、スタートアップの株を買う。そういうイメージで合っている。
代表的な事例を一つ挙げると、BeatBox Beverageというスタートアップがある。2020年に$100程度から投資できた案件で、後にアンハイザー・ブッシュ(BUD)に約4億9000万ドルで買収された。
買収額だけ見ると派手だが、「じゃあいくら儲かったのか」という具体的なリターンは、個々の投資時期や保有株数によって全然違う。夢を見すぎないようにしたい。
なぜ日本では知られていないのか
正直、私もこの制度の存在を知らなかった。
理由は単純で、日本に住んでいると米国のReg-CF案件に普通は触れられないからだ。SEC登録ポータルは米国在住者・市民向けで、日本のパスポートで参加できるかどうかはポータルごとにルールが異なる。
日本では、類似した仕組みとして「株式投資型クラウドファンディング」がある。FUNDINNO(ファンディーノ)が代表格で、金融庁の規制下で未上場企業に出資できる。最低投資額は数万円から。
ただ、日本版は規模・銘柄数ともにまだ小さい。米国Reg-CFと比べると「開いたばかりのマーケット」という印象だ。
似たような「小口から始められる」という切り口では、対象を株式ではなく不動産に絞ったクラウドファンディングもある。株式型が値上がり益・イグジットを狙うハイリスク・ハイリターン型なのに対し、不動産クラウドファンディングは賃料収入などをもとにした分配金が軸になっていて、リスクの性質がだいぶ違う。同じ「小口投資」というくくりでも狙いが違う選択肢として、知っておくと視野が広がる。
リスクについて正直に言う
スタートアップ投資が高リスクであることは言うまでもない。
SECも年間の投資上限を設けている(年収や純資産に応じて異なる)。理由は「無制限に投資させると被害が大きくなる」という保護の意味があるからだ。当局がリスクを認識していることの裏返しでもある。
スタートアップの大半は失敗する。仮に10社に$100ずつ投資したとして、9社がゼロになっても1社が大当たりしたとき——それがこのクラスの投資の発想だ。
でも、「9社ゼロ+1社大当たり」という結果を引き寄せるには、目利き力とポートフォリオの設計が必要で、それは一朝一夕には身に付かない。
私個人のスタンス
今のところ、私はReg-CF案件に直接投資していない。
米国在住でないこと、そして公開市場でも十分魅力的な案件が見つかることが主な理由だ。私のポートフォリオはSBI証券を中心に、個別株・ETF・海外株という構成で、今はそちらに集中している。
ただ、興味がないわけではない。
ポートフォリオ全体の5%以下という小さな枠で、試し打ちとして日本版のFUNDINNOあたりを触ってみることは、将来的にあり得る選択肢として頭に入れておきたい。
投資の世界は「知っているか、知らないか」で判断できる選択肢の数が変わる。今回の話はそういう意味で、知っておいて損はない情報だった。


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