「ローマはなぜ滅んだか」を調べると、必ず同じ話が出てくる。財政の悪化、中間層の弱体化、通貨の毀損、政治への不信。海外の投資メディアでは「今のアメリカと重なる」という論調が増えている。最初は誇張だと思っていた。でも数字を確認したら、笑えなかった。
数字で見るアメリカの2026年
まず現状を整理する。
- 2026年財政赤字:約1.9兆ドル(GDP比5.8%)
- 公的債務:GDP比101%→2036年には120%に達する見通し
- 連邦の利払い費:今年は約1兆ドル、2036年には2.1兆ドルに膨張
本格的な不況でも戦争でもない時期に、GDP比5.8%の財政赤字というのは明らかに異常な水準だ。
中間層の分断も進んでいる。連邦準備制度の最新調査では、上位10%の世帯の純資産の中央値が約380万ドルなのに対し、下位25%はわずか3,500ドル。物価上昇に収入が追いついていないと感じている就業者は62%に上る。
さらに深刻なのは政治への信頼だ。「連邦政府を常に、または大抵の場合信頼できる」と答えるアメリカ人はわずか17%。制度は機能しているように見えても、人々はもう信じていない。
ローマとアメリカの共通点5つ
ローマの衰退は一夜にして起きたのではない。数百年かけて、じわじわと進んだ。今のアメリカと重なる点を整理してみる。
- 富の集中:大土地所有者が独立農民を駆逐した。今のアメリカでは上位10%と下位25%の格差が数百倍に開いている。
- 財政の限界:軍・行政・インフラの維持費が限界を超えた。アメリカも防衛費増額・利払い費・社会保障費の三重の圧力に直面している。
- 通貨の毀損:ローマは銀貨の銀含有量を削り続けた。今はフィアット通貨の仕組みで電子的に通貨を増やせる。より巧妙で、問題が潜在化しやすい。
- インフラの劣化:土木工学会の試算では、アメリカのインフラを「まとも」な状態に戻すのに今後10年で9.1兆ドルが必要とされている。
- 政治の機能不全:ローマでは政治的対立が内戦に発展した。今のアメリカの二極化は、歴史的な水準に達している。
日本は他人事じゃない
アメリカを「対岸の火事」として眺める立場に、日本はない。
日本の公的債務のGDP比は260%超で、先進国の中でも突出している。「円建て・国内消化」という構造が維持されているうちはギリギリ成立しているが、それが永遠に続く保証はない。日銀が金利を少し上げるだけで、利払い費は跳ね上がる。
財政が持続不可能なペースで悪化しているという点は、アメリカも日本も共通した課題だ。
帝国が滅んでも、金だけは残った
ローマ帝国の遺跡から出てくる金製品は、今でも輝いている。硬貨は偽造されて価値を失い、制度は崩れ、国家は滅んだ。でも金だけは、2,000年後の現代においても価値を持ち続けている。
「金は配当も利子も生まない」という批判はよく聞く。そのとおりだ。でも金は「誰かの信用に依存していない」という点で、他の資産と根本的に異なる。株式も、債券も、通貨も、突き詰めれば「発行体の信用」で成り立っている。金だけがその外側にある。
正直に言うと、私はまだゴールドを持っていない
今の私のポートフォリオを見ると、VOO(S&P500)・VT(全世界株)・VYM(高配当ETF)といったインデックス系ETFと、日本株・アジア株が中心だ。金(ゴールド)はどこにも入っていない。
「金より株のほうがリターンが高い」という判断でここまで来た。それ自体は間違いではないと思っている。ただ今回、ローマとアメリカの財政を比較しながら一つ気づいた。
今持っているものが「政府・中央銀行の信用」に全乗りしているという現実だ。株式は企業価値に裏打ちされているが、その企業価値は安定した経済・通貨・法制度を前提にしている。それが揺らいだときのヘッジが、私のポートフォリオには一切ない。
「いくら持つか」より「なぜ持つか」を決める
ゴールドを「値上がりを狙って買う」発想だと、タイミングの問題が生じる。すでに割高かもしれないし、明日下がるかもしれない。
でも「制度が壊れたときの保険として持つ」という発想なら、タイミングはそれほど重要ではない。保険は安いときに買うものではなく、必要になる前に買うものだ。
ポートフォリオの5〜10%程度を「誰の信用にも依存しない資産」に振り向けておく考え方は、シンプルだが合理的だと思う。ローマの賢人たちが最後まで金を手放さなかったように。
私も少しずつ考え方を変えようとしている。今すぐ大きく動かすつもりはないが、「ゴールドをポートフォリオに加えること」を真剣に検討し始めた。
米国の財政悪化という切り口では、利払いが防衛費を超えた話も別記事で書いた。(米国の利払いが防衛費を超えた話)
なお、米国の利払いが防衛費を超えたという具体的な数字は別の記事でも書いているので、興味があれば合わせて読んでほしい。


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