粗利率87%、メモリー会社が「ソフトウェア会社より儲かる」異常事態——マイクロン決算と2018年の教訓、そして売った私

テーマ株・セクター

9月30日に発表されたマイクロン・テクノロジーの決算を見て、思わず数字を二度見した。2026年6〜8月期の売上高は542億ドルで、前年同期の約4.8倍(+379%)。そして売上総利益率(粗利率)は87%、営業利益率は82%だった。

粗利率87%というのは、売上100ドルのうち87ドルが粗利として残るということだ。ソフトウェアのように「一度作れば追加コストがほとんどかからない」ビジネスなら分かる。でもマイクロンが作っているのは、工場で大量に製造するメモリー半導体。昔から「市況品」と呼ばれ、値段が上がったり下がったりを繰り返してきた業界の会社が、ソフトウェア企業並み、あるいはそれ以上に儲かっている。今回は、この異常な好決算の中身と、過去の教訓を整理してみた。

決算の主な数字

項目 2026年6〜8月期(第4四半期)
売上高 542億ドル(前年同期比+379%、前四半期比+31%)
粗利率 87%(前四半期から2.1ポイント上昇)
営業利益率 82%
売上の内訳 DRAM 398億ドル(73%)、NAND 141億ドル(26%)
通期(2026年度)の売上高 1,332億ドル(前年度比+256%)
次の四半期の会社見通し 売上高615億ドル前後、粗利率は約86.25%

次の四半期も売上は過去最高を更新する見通しで、粗利率は86%台を維持するという。少なくとも会社自身は、この好調がすぐに終わるとは見ていない。

なぜここまで儲かるのか:AIが「メモリー不足」を起こしている

理由はシンプルで、AI向けのメモリーが足りないからだ。AIのデータセンターでは、エヌビディアなどのGPUの横に、HBM(高帯域幅メモリー)と呼ばれる特殊なメモリーが大量に積まれている。このHBMや高性能なDRAMの需要が、業界が供給を増やすスピードを上回っている。

マイクロンによると、2027年分のHBMの供給は、すでに大半が「前年より大幅に高い価格」で契約済み。さらに、DRAMとNANDの供給不足は2028年まで続く見通しだという。作れば売れる、しかも値上げしても売れる。粗利率87%は、そういう状態が生んだ数字だ。

ちなみに、AI需要の恩恵は半導体だけにとどまっていない。日銀短観の記事でも書いたように、日本の製造業では鉄鋼や非鉄金属まで景況感が改善していて、その背景にはAI関連需要があると報じられている。マイクロンの決算は、その流れの「震源地」に近い数字と言えるかもしれない。

ただし、メモリー業界には「2018年の教訓」がある

ここで思い出しておきたいのが、メモリー業界の歴史だ。メモリーは景気や需給によって価格が大きく動く「シクリカル(景気循環型)」な製品で、好況と不況を何度も繰り返してきた。

マイクロンが前回、記録的な粗利率をつけたのは2018年度だった。このときの粗利率は61%。ところが、そこから3四半期後には38.2%、さらにその次の四半期には28.6%まで落ち込んだ。最高益から1年ほどで、粗利率が半分以下になったわけだ。需要が強いときに各社が一斉に増産し、供給が追いついたとたんに価格が崩れる。メモリー業界ではこれが繰り返されてきた。

海外の投資メディアでも、議論の焦点は「どこまで伸びるか」から「この利益がいつまで続くか」に移りつつあると指摘されている。2027年に向けて、供給不足と高い価格とAI需要がそろって続くかどうかが、次の大きな注目点になる。

シクリカル株の逆説:「割安に見えるときが天井」

シクリカル株には、投資の世界でよく知られた逆説がある。利益が過去最高のとき、株価の割安さを測るPER(株価収益率=株価÷1株あたり利益)は、分母の利益が大きいぶん低く出る。つまり、一番儲かっている時期ほど「割安」に見えやすい。

でも、その利益が来年も続く保証はない。利益が減れば、同じ株価でもPERは一気に高くなる。だからシクリカル株は「PERが低くて割安に見えるときが天井、PERが高くて割高に見えるとき(=利益が落ち込んでいるとき)が底」になりやすい、と言われる。いわゆる普通の株と、逆のことが起きるわけだ。

今回のマイクロンが「いつもの循環」なのか、それともAIで業界の構造が変わった「新しい時代」なのかは、まだ誰にも分からない。歴史はそのまま繰り返すとは限らないけれど、メモリー業界ではよく似たリズムを刻んできたのも事実だ。

加藤智也の視点:私はマイクロンを「売った側」の人間だった

実は私も、以前マイクロン株を持っていた。そして2025年に、全部売ってしまっている。4月に一部を1株92.98ドルで売り、6月に残りを118ドルと125.105ドルで売った。

そのマイクロン株が、今は1株1,065ドル前後。私が売った値段の、ざっくり9〜11倍だ。決算の数字を調べながら売却履歴の画面を見返すと、なんとも言えない気持ちになる。あのとき手放したのが悔やまれる(涙)。

ただ、こうして振り返ってみて思うのは、「売ったこと」自体を後から責めても仕方がないということだ。2025年の時点で、メモリー会社の粗利率が87%になると予想できた人は、ほとんどいなかったと思う。シクリカル株は持ち続けるのも、売るタイミングを決めるのも本当に難しい。

今の私のポートフォリオで半導体に関係しているのは、台湾セミコンダクター(TSMC)とエヌビディアの2銘柄。どちらも少額ながら保有していて、TSMCは取得価格から約5.5倍、エヌビディアは約2倍になっている。それに加えて、NASDAQ100に連動する投資信託やETFも持っているので、その中身を通じて半導体株には間接的にも投資している。マイクロンもNASDAQ100の構成銘柄なので、実はほんの少しだけ「間接的に持ち直している」とも言える。

この先どうなる? 考えられる3つのシナリオ

  • シナリオ1:供給不足が2028年まで続く 会社の見立てどおりAI需要が強く、HBMやDRAMの不足が続けば、高い利益率がしばらく維持される
  • シナリオ2:増産で供給過剰に戻る マイクロンを含むメモリー各社は設備投資を増やしている(マイクロンの次の四半期の設備投資は約115億ドルの見通し)。供給が需要に追いつけば、2018年のように価格と利益率が急落する可能性がある
  • シナリオ3:AI投資そのものが減速 データセンターへの投資ペースが落ちれば、メモリーの需要見通しも変わる。メモリーは需要の変化が価格に表れやすい

どのシナリオになるかは分からないけれど、今のマイクロンの数字が「業界の歴史の中でも異例」であることは間違いない。好決算のニュースを見たときこそ、その利益がどれくらい続きそうかを考えるクセをつけておきたいと思う。

売った後に化けた銘柄、ありますか?

マイクロンの件で、改めて「売る判断」の難しさを感じた。皆さんにも、売った後に大きく値上がりして後悔した銘柄はありますか? そして、その経験の後で売り方や持ち方を変えたことがあれば、ぜひコメントやX(@ktn12012009)で教えてください。私自身、今のポートフォリオの整理に悩んでいるところなので(月次ポートフォリオの記事)、皆さんの経験を聞いてみたい。

💡 補足

・マイクロン・テクノロジー(ティッカー:MU)は米アイダホ州に本社を置くメモリー半導体大手。DRAMではサムスン電子、SKハイニックスと並ぶ大手3社の一つ
・DRAMはパソコンやサーバーの作業用メモリー、NANDはSSDやスマホなどのデータ保存用メモリー
・HBM(High Bandwidth Memory)はDRAMを縦に積み重ねて高速化したメモリーで、AI向けGPUに欠かせない部品になっている
・マイクロンの会計年度は9月始まりのため、2026年6〜8月期が「2026年度第4四半期」にあたる

📊 加藤智也の分析メモ

売った銘柄がその後10倍近くになる経験は、正直かなりこたえる。ただ、今回の決算を細かく見ると、マイクロンの利益は「AIによるメモリー不足」という特殊な状況の上に成り立っていることも分かる。過去の最高益のあとに何が起きたかを知っておくことは、今からこの株に興味を持つ人にとっても大事だと思う。今の私のポートフォリオは、TSMCやエヌビディアの個別株と、NASDAQ100の投資信託・ETFを通じて、半導体業界に広く投資する形になっている。好決算のニュースほど、一歩引いて見るようにしたい。

※本記事はマイクロン・テクノロジーの決算発表および報道をもとにした2026年10月1日時点の情報提供を目的としており、特定の銘柄・金融商品への投資を推奨するものではありません。株価や業績の見通しは変動する可能性があります。投資判断はご自身の責任でお願いします。

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