銀行×証券×クレカの経済圏争い──ドコモの銀行・Olive Infinite・UFJプラチナの裏側

銀行×証券×クレカの経済圏争い──ドコモの銀行・Olive Infinite・UFJプラチナの裏側 - 加藤智也ノートのアイキャッチ画像 マクロ・資産防衛

自分は普段SBI証券を使っている。銀行連携の口座は、これまで住信SBIネット銀行を使うのが定番だった。ところが最近ログインしてみたら、いつの間にかアプリの名前もブランドも「ドコモの銀行」に変わっていて、思わず二度見した。調べてみると、これがなかなか面白い構図になっていた。

住信SBIネット銀行が「ドコモの銀行」になった

2025年10月1日、住信SBIネット銀行はNTTドコモの連結子会社になった。そして2026年8月3日、商号を「株式会社ドコモSMTBネット銀行」に変更。ドコモと三井住友信託銀行による共同経営体制になり、個人向けのサービスブランドも「ドコモの銀行」に切り替わった。長年「住信SBI」の名前でSBI証券ユーザーに親しまれてきた銀行が、ブランドとしてはSBIから離れ、ドコモ色の強い銀行に生まれ変わったということになる。

一方でSMBCはSBI証券と組んで富裕層を囲い込む

ここで面白いのが、SBIグループにとって住信SBIネット銀行の”卒業”は痛手のはずなのに、別の切り口でSBI証券との連携を強めている金融機関がある。三井住友銀行(SMBC)だ。

2026年5月26日、三井住友銀行はOliveシリーズの最上位カード「Olive Infinite」の提供を開始した。年会費は99,000円(税込)。ただし条件を満たせば無料になる。その条件がなかなか興味深い。三井住友銀行の円普通預金残高500万円以上に加えて、SBI証券の残高500万円以上という条件がセットで入っているのだ(更新時にはさらに年間カード利用100万円以上の条件も加わる)。

つまりSMBCは、自社の預金だけでなくSBI証券の資産残高もセットで評価することで、SBI証券ユーザーである富裕層をOlive経済圏に呼び込もうとしている。以前書いた三菱UFJの「エムット Excellent Club」の記事でも触れたが、メガバンク各行が富裕層の囲い込みに本腰を入れる中、SMBCはSBI証券という外部プレイヤーと手を組む形でこの競争に参戦している格好だ。

Olive Infiniteの特典、正直かなり豪華

年会費9.9万円という数字だけ見ると身構えてしまうが、中身を見ると納得感のある特典が並んでいる。

  • プライオリティパスが無料で付帯し、世界1,800以上の空港ラウンジが利用可能
  • 三井住友銀行・Oliveのラウンジも利用できる
  • 「招待日和」という特典で、全国200店以上の厳選レストランで、指定コースを2名以上で利用すると1名分が無料になる
  • 24時間365日対応のコンシェルジュサービスで、レストラン予約・ホテル手配・移動手段の手配・チケット手配などを依頼できる

普段なかなか体験しない非日常のサービスが、条件さえ満たせば無料で付帯してくる。これはこれで、富裕層向けカードとして正攻法の作り込みだと感じた。

UFJの無料プラチナは「本家」とは別物

ここで思い出したのが、以前書いた三菱UFJの「エムット Excellent Club」で無料になるという、アメックスのプラチナカードの話だ。実はこれ、よく見ると「本家」のアメックス・プラチナ・カードとは別物なので、補足として整理しておきたい。

アメックスのプラチナ・カードには、大きく分けて2種類ある。一つはアメリカン・エキスプレスが直接発行する「プロパーカード」で、年会費は165,000円。もう一つは、他社(銀行やクレジットカード会社)がアメックスのライセンスを使って発行する「提携カード」だ。

UFJのエムット Excellent Clubで無料になるプラチナカードは、正式名称を「エムット Excellent Club カード プラチナ アメリカン・エキスプレス・カード」といい、発行元は三菱UFJニコス。つまりこちらは「提携カード」にあたる。

この違いが効いてくるのが、本家プロパーカードの目玉特典であるコンシェルジュサービスと、センチュリオン・ラウンジという世界各地の高級空港ラウンジだ。センチュリオン・ラウンジは、アメックスが直接発行するプロパーカードでなければ利用できないのが業界の一般的な仕組みで、提携カードでは基本的に対象外になる。

「無料でアメックスのプラチナカードが手に入る」と聞くと、つい本家プロパーカードの特典を思い浮かべてしまいそうになるが、実際にはUFJ独自の「預け入れ残高連動でポイント還元率が上がる」という別の設計思想のカードだ。本家とちゃうんかーい、と一人でツッコミを入れてしまった。もちろんそれ自体が悪いという話ではなく、住み分けとして理解しておくと、比較するときの目線がずれずに済む。

ドコモは自前で銀行×証券×クレカを揃えつつある

話を経済圏全体に戻すと、ドコモの動きもかなり本気だ。住信SBIネット銀行改めドコモSMTBネット銀行に加えて、ドコモは2024年1月にマネックス証券とも資本業務提携を結んでいる。同年7月には「dカード積立」が始まり、dアカウントとの連携、dポイントでの投資信託購入、さらに2025年には「d払い」アプリから証券口座を開設できる「かんたん資産運用」も始まった。

つまりドコモは、銀行(旧住信SBI)・証券(マネックス)・クレジットカード(dカード)・決済(d払い)という金融の主要ピースを、通信キャリアという立場から自前で揃えつつある。

整理すると、三つ巴の経済圏争い

ここまでを整理すると、次のような構図が見えてくる。

  • ドコモ陣営:旧住信SBIネット銀行(ドコモSMTBネット銀行)+マネックス証券+dカード・d払いで、通信キャリア発の金融経済圏を自前構築
  • SMBC陣営:三井住友銀行のOliveを軸に、外部のSBI証券とも連携条件を組み込みながら富裕層を囲い込み
  • SBI陣営:住信SBIとの縁は薄れたが、SBI新生銀行との連携(SBIハイパー預金)や三井住友カードとの積立連携で、自前のエコシステムを維持

銀行・証券・クレジットカード・通信キャリアという、これまで別々の業界だった企業同士が、異業種連合という形で顧客の資産と決済をまとめて囲い込みにいく動きが、あちこちで同時進行している。

なぜここまでやるのか

これは以前のメガバンク富裕層争奪戦の記事でも触れたロジックと同じだ。現金や資産を自社(グループ)内に置いてもらうことが、理財収益・手数料収益・金利収益の源泉になる。今回のケースでは、そこにクレジットカードの継続利用や、通信契約の継続利用という、別の収益源も重なってくる。一つの企業だけでなく、グループ全体・提携先全体でユーザーを囲い込むことで、乗り換えのハードルをどんどん上げていく戦略なのだと思う。

自分の立ち位置

正直に言うと、自分はOlive Infiniteの無料化条件(預金500万円+SBI証券残高500万円、Olive合算5,000万円以上)には届いていない。年会費9.9万円を素直に払ってまで使うかと言われると、今のところそこまでの必要性は感じていない。ただ、プライオリティパスや招待日和のような特典は素直に魅力的で、資産形成が進んだ将来、選択肢の一つとして頭には入れておきたいと思っている。

まとめ

銀行・証券・クレジットカード・通信キャリアが入り乱れる「経済圏争い」は、富裕層向けサービスの拡充と合わせて、今後さらに加速していきそうだ。自分がどの経済圏に(意識せずとも)組み込まれているのか、たまに立ち止まって整理してみるのも悪くないと思う。

💡 制度・カードの補足

アメックスの「プロパーカード」はアメリカン・エキスプレスが直接発行するカードで、「提携カード」は銀行やクレジットカード会社がアメックスのライセンスを使って発行するカードを指す。プロパーカードのプラチナ・カードは年会費165,000円で、24時間対応のコンシェルジュサービスや世界各地のセンチュリオン・ラウンジが利用できる。一方、UFJのエムット Excellent Clubのプラチナカードは三菱UFJニコス発行の提携カードで、預け入れ残高連動のポイント還元が特徴の別設計のカードになる。

📊 加藤智也の分析メモ

今回一番驚いたのは、住信SBIネット銀行がドコモの銀行に変わっていたことに、ログインするまで気づかなかった自分自身だ。金融機関同士の資本再編は、ユーザー側からすると意外と静かに進んでいく。SBI証券を使っているからといって、連携先の銀行までずっとSBI系列とは限らない、ということを今回改めて実感した。今後もこうした資本関係の変化には、こまめにアンテナを張っておきたい。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融機関・カード・サービスの利用を推奨するものではありません。各社のサービス内容・条件・特典は2026年9月時点の情報に基づいており、今後変更される可能性があります。実際の利用にあたっては各社の最新情報をご確認ください。

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