海外の投資系サイトを読んでいたら、「ドルが静かに弱くなっている」という話が目に留まった。米国株一択で資産形成を考えがちな自分にとって、少し立ち止まって考えさせられる内容だったので調べてみた。
ドルはこの数年でどれだけ弱くなったのか
ユーロに対するドルの推移を確認すると、2022年9月には1ユーロ=0.95ドル程度まで下落し、これは2002年以来の安値水準だった。そこから持ち直しが続き、2026年1月には1ユーロ=1.20ドル近辺まで上昇。直近(9月11日時点)では1ユーロ=1.16ドル程度で推移している。つまり、2022年の底値と比べると、ドルはユーロに対して2割前後価値を落としたままの状態が続いていることになる。ただし、ここ最近はFRBの利上げ観測が強まっていることを受けてドルがやや持ち直す場面も出ており、一方向に弱くなり続けているわけではない、という点は補足しておきたい(このあたりは、以前書いた日銀の利上げ観測と円安のねじれの話とも通じる、金利差が為替を左右する構図そのものだ)。
米国株と欧州株、過去25年で最大級の評価格差
為替以上に興味深かったのが、米国株と欧州株の株価評価(バリュエーション)の差だ。フォワードPER(将来の利益予想に基づく株価収益率)で見ると、米国株(S&P500)が約22倍であるのに対し、欧州株(MSCI Europe)は約13〜14倍程度とされ、これは過去25年で最大級の開きだという。同じ「株式」というくくりでも、米国株を買う投資家は欧州株を買う投資家よりも、将来利益1ドルあたりに高い金額を払っていることになる。
この格差が生まれた大きな理由の一つが、指数の”中身”の違いだ。S&P500は情報技術セクターの比率が3〜4割程度を占めるとされ、AI関連の期待も相まって指数全体を押し上げてきた。一方、欧州の代表的な株価指数はヘルスケア・資本財・生活必需品などに幅広く分散しており、情報技術セクターの比率は1割程度にとどまるとされる。AI相場の恩恵をダイレクトに受けやすい米国株と、AI関連リスクへの感応度が相対的に低い欧州株という違いが、そのままバリュエーション格差に表れている格好だ。
ただし、この格差は縮小し始めている
気になったのは、この格差が「今後も開き続ける」という話ではなく、むしろ縮小し始めているという分析があった点だ。リーマン・ショック以降、米国企業の利益成長率は欧州企業を年平均8ポイント程度上回ってきたとされるが、2025〜2027年にかけてはその差が2ポイント程度まで縮まると見込まれている。欧州企業の増益ペースが相対的に追いついてきているということであれば、これまでのような大きな評価格差を維持する根拠も薄れていく可能性がある。
自分のポートフォリオを振り返ってみる
正直なところ、自分の米国株・米国ETFへの比重はかなり高い。ただ改めて保有資産を見直してみると、VXUS(全世界除く米国)やVT(全世界株式)、DEM(新興国高配当)といった銘柄も持っているので、意識していなかったが結果的に欧州株にも一定額は間接的に分散投資できていることに気づいた。とはいえ、欧州株そのものをピンポイントで狙う投資信託・ETFは持っていないので、今回調べた内容は「ポートフォリオの地理的な偏りを一度棚卸ししてみる」きっかけになった。
まとめ
米国株一択の考え方に慣れていると、他地域の株式市場の動きは見落としがちになる。今回のように、ドルの為替水準や評価倍率の格差という切り口で見てみると、米国集中投資にもそれなりのコスト(割高な株価を払っているという側面)があることに気づかされる。この格差が今後さらに縮小するのか、それとも再び開くのかは断定できないが、少なくとも「地理的な分散」という選択肢を頭の片隅に置いておく価値はありそうだと感じた。
💡 用語の補足
「フォワードPER」は、企業の将来(通常は今後12ヶ月)の予想利益をもとに算出した株価収益率で、市場が将来の成長性をどれだけ織り込んでいるかを見る指標として使われる。数値が高いほど、利益に対して株価が割高に評価されている(将来の成長への期待が大きい)ことを意味する。為替の「クロスレート」(ここではユーロ/ドル)は、二国間の金利差や経済状況、金融政策の見通しなどによって変動する。
📊 加藤智也の分析メモ
今回調べていて印象的だったのは、「米国株が強い」という状態が、裏を返せば「米国株が(欧州株と比べて)割高になっている」という状態でもあるという、当たり前だけど普段意識しにくい視点だった。自分の資産配分を振り返るきっかけとして、たまにはこうした地域間比較のニュースにも目を向けたいと思う。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の商品・銘柄・地域への投資を推奨するものではありません。為替水準・株価評価倍率等は2026年9月時点の情報に基づいており、今後変動する可能性があります。投資判断は自己責任で行ってください。


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