先日、SoftBank World 2026での孫正義さんの特別講演のニュースを読んでいて、正直ちょっと鳥肌が立った。
2040年までに「100兆個」のAIエージェントが世界中で常時稼働し、「10億台」のヒューマノイドロボットが生まれる。ロボット1台が人間10人分近い働きをするから、合計すると人間100億人分の労働力に相当するという試算らしい。世界のGDPの約20%、金額にして約7,000兆円がAI経済圏に置き換わり、利益は約3,500兆円にも達する。そのためのインフラ投資額は年間5兆ドル(約800兆円)にのぼるというから、もはやスケール感が普段の生活とかけ離れていて実感が湧かない。
AIエージェントが「当たり前」になる生活
今でもチャット型のAIに質問したり、文章を作ってもらったりするのは当たり前になってきたが、孫さんが描いているのはその先だ。AI同士が人間を介さずに直接やり取りし、勝手に仕事を進めていく「AIエージェント中心の世界」。買い物の予約も、通院の手配も、投資の運用も、気づいたら裏側でAIエージェント同士が話し合って完結している──そんな生活が2040年には当たり前になっているのかもしれない。ヒューマノイドが実際に体を持って働く未来まで含めると、もはやSF映画の設定が現実の投資テーマになりつつあるということだ。
でも孫さん自身が最後に警告していたこと
この講演で個人的に一番印象に残ったのは、明るい未来予測を延々と語ったあとの締めくくりで、孫さんがサイバーセキュリティの話をしていたことだった。ソフトバンク自社のシステムにAIを使った攻撃テストをかけたところ、なんと1万500件もの脆弱性が見つかったという。さらに診断先の63社すべてに何らかのサイバー攻撃の穴があったというから穏やかじゃない。この結果を受けて、ソフトバンクは1,000人規模の専門部隊を新たに組織したそうだ。
AIがどんどん賢くなって生活に溶け込むほど、その裏側では「AIを悪用したハッキング」のリスクも同じスピードで大きくなっている、ということなんだと思う。
海外の投資情報でも同じ警鐘が鳴っていた
ちょうど同じタイミングで、私が定期的に目を通している海外の投資家向けニュースレターでも似たテーマの記事を読んだ。IBMの調査によると、報告された不正アクセスのうちおよそ4件に1件はすでにAIが関与していて、被害額は平均で6,000億円規模にのぼるという。
そこで出てきたのが「Q-Day」という聞き慣れない言葉。量子コンピュータが、今のインターネットを支えている暗号技術(RSAやECCという方式)を破ってしまう日、という意味らしい。今のところそこまで強力な量子コンピュータはまだ存在しないが、「あと2年」という試算も出ているそうで、思ったより近い話だと感じた。
今すぐ暗号を破れなくても、もう危険は始まっている
個人的に一番怖いと感じたのは「ハーベスト・ナウ、デクリプト・レイター(今収穫して、あとで解読する)」という攻撃の考え方だ。今の時点で量子コンピュータが実用化されていなくても、悪意ある側は今のうちに暗号化された通信やデータをごっそり盗んで保存しておき、将来量子コンピュータが実用化された時点でまとめて解読する、というやり方らしい。銀行取引や個人情報、企業の機密データなんかがすでに水面下で狙われているかもしれないと思うと、なかなか背筋が寒くなる。
投資家目線で気になったこと
海外では量子コンピュータ関連の銘柄として、Rigetti Computing(RGTI)やIonQ(IONQ)がよく話題に上る。値動きがかなり荒く、以前も著名企業トップの「実用化はまだ20年先」という発言一つで急落したことがあるくらいで、正直まだ自分では手を出せずにいる。
その一方で、私はNVIDIA(NVDA)を以前から保有していて、含み益は+90%ほどになっている。AIの進化そのものの恩恵をがっつり受けている立場だからこそ、今回のような「AIが進化するほどハッキングの武器としても強くなる」という話は他人事に思えなかった。恩恵とリスクは表裏一体なんだと、あらためて実感させられた話だった。
個人でできる備えは、意外と地味なことばかり
国家間の暗号戦争なんて言われても個人にできることは限られているが、身近なところでできる自衛策は次のようなものだ。
- SMSでの二段階認証はやめて、パスキーやハードウェアキーに切り替える
- 身に覚えのない連絡・急かしてくる連絡は、別の手段で必ず本人確認する
- スマホやPC、アプリのアップデートはこまめにする(AIによる攻撃も、結局は放置された既知の脆弱性を突いてくることが多いらしい)
- パスワードは使い回さず、パスワードマネージャーで管理する
- 暗号資産などまとまった金額を扱う場合は、ハードウェアウォレットとオンライン用を分けておく
地味だけど、結局はこの積み重ねが「狙われにくい人」を作るんだと思う。
まとめ
孫さんの講演を読んで感じたのは、AIが生活やお金にどんどん密着していく未来はもう止まらないということ。ただ、その恩恵を受け取るのと同じスピードで、備えるべきリスクも大きくなっているという事実からは目を逸らせない。派手な未来予測の裏にある地味な自衛策にこそ、今のうちに手をつけておきたいと思う。
💡 銘柄・企業の補足
Rigetti Computing(RGTI)とIonQ(IONQ)は、どちらも量子コンピュータの実機開発を手がける米国のベンチャー企業。Rigettiは超伝導方式、IonQはイオントラップ方式という異なるアプローチで量子コンピュータの実用化を目指している。まだ売上規模は小さく、実用化への期待感で株価が動く「思惑株」的な性格が強い。値動きが荒いぶん、投資する場合はポートフォリオ全体のごく一部に留めるのが無難だろう。
📊 加藤智也の分析メモ
今回いちばん考えさせられたのは、孫さんのような未来を積極的に描く人ほど、最後にリスクの話を忘れずに添えていたこと。私自身もNVIDIAの含み益に浮かれがちだけど、AIの進化スピードに対して自分のセキュリティ対策(パスワード管理やアップデート)が追いついているかと聞かれると、正直あやしい。派手なテーマ株を追いかけるのと同じくらいのエネルギーを、自分の身の回りのデジタル防御にも配分していきたい。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や金融商品への投資を推奨するものではありません。孫正義氏の講演内容・各種統計は2026年9月時点で報じられた情報に基づいており、今後内容が更新される可能性があります。投資判断は自己責任で行ってください。


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