含み益+210%のミューラー・インダストリーズ、AIが掘り尽くす銅相場の正体

含み益+210%のミューラー・インダストリーズ、AIが掘り尽くす銅相場の正体 - 加藤智也ノートのアイキャッチ画像 テーマ株・セクター

海外の投資ニュースレターで「銅の強気相場はまだ終わっていない」という記事を読んだ。AIデータセンター、電気自動車(EV)、電力インフラの3つが同時に銅需要を押し上げているという内容だったが、実はこのテーマ、自分にとっては他人事ではない。ポートフォリオの中に含み益+210%まで育っている銅関連の米国株があるからだ。今回はそのデータを深掘りしながら、日本の個人投資家が銅相場にどう向き合えるかまで考えてみたい。

「AIデータセンター1つで銅40トン」の中身

記事の中で目を引いたのは、AIデータセンターは1メガワット(MW)あたり20~40トンの銅を消費するという世界経済フォーラムのデータだった。数字だけ見てもピンとこないので、実際の規模に当てはめて計算してみる。現在建設されている大規模なハイパースケールデータセンターは50MW~100MW級が主流とされる。仮に80MW規模のデータセンターを1つ建てるとすると、単純計算で1,600~3,200トンの銅が必要になる計算だ。これは一般的な乗用車(1台あたり銅使用量は約20~25kg)に換算すると、6万台分以上の銅を1つのデータセンターだけで使う計算になる。しかもコンサルティング大手のマッキンゼーは、2030年までに世界のデータセンター投資額が7兆ドル規模に達すると試算している。これだけの投資が実行されれば、銅の需要曲線が右肩上がりになるのも納得できる話だ。

供給側も逼迫している

需要だけでなく供給側の事情も見逃せない。国際銅研究会(ICSG)によると、今年上半期の世界の銅鉱山生産量は前年比-1.1%で、このままだと2017年以来はじめて年間ベースでも減産になる可能性があるという。理由は単純で、銅も他の鉱物資源と同じく有限であり、既存鉱山の鉱石の品位(含有率)が年々下がってきているため、同じ量の銅を得るためにより多くの岩石を掘削・処理する必要が出てきている。しかも新規鉱山の開発には発見から生産開始まで15年以上かかることも珍しくなく、需要の急増スピードに供給が追いつきにくい構造になっている。加えてチリ・コンゴ・パナマといった主要産銅国は政治的なリスクを抱えており、パナマでは大規模鉱山が抗議活動を受けて操業停止に追い込まれた例もある。需要は伸びているのに、供給側は簡単には増やせない——これが「銅の強気相場」の骨格だ。

実際に持っている銅関連株の含み益

自分はミューラー・インダストリーズという、銅管や銅合金部品を製造する米国企業の株を1株20.68ドルほどで取得し、現在64ドル台まで上昇していて含み益は+210%になっている。正直なところ、買った当初はここまで伸びるとは思っておらず、「銅や工業資材は地味だけど景気敏感セクターの一つ」くらいの位置づけで少額を仕込んだ銘柄だった。それが電力インフラ・EV・AIデータセンターという3つの需要が重なったことで、想定以上のペースで評価額が積み上がっている。派手なAI銘柄ばかりに目が行きがちだが、AIブームの「裏側」で恩恵を受けている資材・素材株があるという事実を、身をもって実感している。

日本の個人投資家が銅相場に投資する方法

海外の情報では、個別の銅鉱山株を買う以外の選択肢として、銅鉱山企業をまとめて保有できる米国上場の銅マイナーETF(経費率0.65%、配当利回り2%程度)が紹介されていた。この手のETFは主要なネット証券であれば外国株取引口座を通じて購入でき、新NISAの成長投資枠の対象になっているものも多い。

一方で「米国株はハードルが高い」と感じる人向けに、日本国内にも銅相場の恩恵を受けやすい銘柄はいくつか存在する。代表格は住友金属鉱山で、自社で鉱山を保有している(自山鉱を持つ)ため、銅価格が上がればその恩恵をダイレクトに受けやすい構造になっている。一方、鉱石を仕入れて製錬・加工するだけの企業(カスタム製錬所)は、原料の銅精鉱そのものが不足すると逆に採算が悪化するケースもあり、同じ「銅関連株」でも自社で鉱山を持っているかどうかで明暗が分かれやすい点には注意が必要だ。三菱マテリアルや古河電気工業のように、事業の効率化や他社との事業統合(共同調達によるコスト競争力強化など)を進めている企業もあり、一括りに「銅高騰=全社追い風」と考えるのは早計だとわかる。

投資家目線:含み益+210%でも売らない理由

含み益が+210%まで膨らむと、利益確定を意識してもおかしくない水準だが、自分はまだ保有を継続している。理由は単純で、銅の需給逼迫は一時的なブームではなく、電力インフラの更新・EV普及・AIデータセンター拡大という複数年単位の構造的なトレンドが重なっているからだ。短期的な値動きに一喜一憂するより、このメガトレンドが続く限りは乗り続けたいというのが今の判断だ。もちろん、鉱山ストライキの終結や景気後退による需要減退など、逆風が吹く可能性もゼロではないので、決算や銅価格の推移は定期的にチェックしている。

💡 銘柄・企業の補足

・ミューラー・インダストリーズは、銅管・銅合金製品・配管部品を製造する米国の老舗工業メーカーで、住宅設備からエアコン、電力インフラまで幅広い分野に銅製品を供給している
・「自山鉱」とは、企業が自ら保有・操業している鉱山のこと。自山鉱を持つ企業は銅の原料調達を外部に頼らずに済むため、資源価格上昇時の利益率改善が期待しやすい

📊 加藤智也の分析メモ

「AIデータセンター1MWあたり銅20~40トン」という数字を実際のデータセンター規模に当てはめて計算してみると、想像以上のインパクトがあることに気づいた。派手なAI関連の半導体株だけでなく、その裏側で恩恵を受ける地味な資材・素材セクターにも目を向けておくと、ポートフォリオに厚みが出ると改めて感じた一件だった。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。保有銘柄・損益は執筆時点の個人の投資状況に基づくものであり、将来の成果を保証するものではありません。市場データは2026年9月時点で公表されている情報に基づいており、今後の相場動向により内容が変わる可能性があります。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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