「インフレは冷えた」は本当か──ディスインフレの罠と資産が溶ける複利インフレの現実

マクロ・資産防衛

「インフレ落ち着いた」と思っていたら資産が溶けていた

2022〜2023年の激しいインフレ局面が落ち着いてきたというニュースが増えてきた。米国CPI(消費者物価指数)がピークの9%超から2〜3%台に下がり、FRBも利下げに転じた。「インフレ問題は一段落」という空気が広がっている。

ただ、私はこの状況に少し違和感を感じている。「インフレが落ち着いた」のと「物価が下がった」は全く違う話だからだ。年率3%のインフレが続くということは、物価は上がり続けているということだ。

複利インフレが10年で資産価値をどれだけ削るか

具体的に計算してみよう。年率3%のインフレが10年続いた場合、現金100万円の実質購買力は74万円程度になる(約26%の目減り)。20年続けば55万円を下回る。

これが「複利インフレ」の恐ろしさだ。毎年の物価上昇は小幅に見えても、複利で積み重なると長期保有の現金・低利率預金の実質価値は静かに侵食される。私が投資を続けている理由のひとつはここにある。銀行預金に積み上げておくだけでは、インフレに負けて資産が「溶けていく」からだ。VOO・VT・SPYDなどのETFへの投資は、インフレに打ち勝つリターンを追いかける行為でもある。

ディスインフレ局面こそ油断禁物

問題は、インフレが落ち着いてくると「もう大丈夫」という心理的な緩みが生じることだ。これがディスインフレの罠だと私は感じている。インフレが3%に落ち着いても、年率3%の資産成長を確保しなければ実質的には原資が減り続ける。しかも今後、AI・エネルギー転換・地政学的な供給制約などによってインフレが再加速するリスクは消えていない。

私が2026年に配当型資産へのシフトを進めたのも、現金・低リターン資産に置いておくことへのリスク意識からだ。SBI・S・米国高配当株式ファンドへの460万円投入は「インフレに負けないキャッシュフロー」を増やすという目的でもある。ディスインフレで一息つくのはわかる。でも、それで投資の手を緩めるのは危ないと私は思っている。

私がインフレを「実感」し始めたのは2023年頃からだ。スーパーの値段、外食費、光熱費。気づかないうちに生活コストが上がっていた。「株式資産が増えていても、生活水準が落ちている」という矛盾が生まれた時期だ。インフレに負けないために株式投資を続けることの意味を、改めて実感した局面だった。資産が名目上増えても、インフレ分を差し引いた「実質リターン」を意識することが長期投資の本質だ。

投資に正解はありません。でも、情報を増やすことで選択肢は広がります。判断はご自身で。

💡 補足

・実質金利は「名目金利-期待インフレ率」で計算され、資産価値の実質的な目減りを判断する基準になる
・コアCPI(食品・エネルギーを除く)とヘッドラインCPI(総合)は動きが異なることがあり、政策判断はコアCPIを重視する傾向がある

📊 加藤智也の分析メモ

名目上の資産額が増えていても、生活コストの上昇分を差し引いた「実質リターン」で見ないと本当の豊かさは測れない。この視点を持つようになってから、インフレ局面での投資判断がぶれにくくなった。

なお、物価上昇が続く本当の理由は別の記事でも書いているので、興味があれば合わせて読んでほしい。

物価上昇が続く本当の理由については別記事で考えた。(物価上昇が続く理由の記事)

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