海外の投資ニュースレターを読んでいたら、あるタバコ銘柄が「2024年に推奨してから年率40%近いペースで値上がりしている」という話が出てきた。自分もその銘柄を持っているので、思わず現在の含み益を確認してしまった。改めて数字を見ると、配当利回り6.4%という表面上の数字だけでは語り尽くせない、この手の「ディフェンシブ株」の強さと、日本の個人投資家ならではの落とし穴に気づいたので、今回はその話をまとめておきたい。
景気後退に強いのは「公益・ヘルスケア・生活必需品」
海外の資産運用会社が1960年から2019年までに起きた7回の景気後退局面を調べたデータによると、下落相場での平均下落率は公益セクターが-2%、ヘルスケアが-3%、エネルギーが-4%だったのに対し、生活必需品セクターは唯一プラスの+1%だった。一方でテクノロジー株は平均-20%、不動産に至っては-22%も下落している。好景気のときに派手に上がる銘柄と、不景気でも崩れにくい銘柄はまったく別物だということが、このデータから読み取れる。
タバコ株はこの「生活必需品」セクターの中でも特に値動きが安定していると言われる業種だ。景気がどうであれ、既存のユーザーが急に喫煙をやめるわけではなく、価格転嫁もしやすい。派手さはないが、下落相場でポートフォリオ全体のクッションになる、という位置づけの銘柄だ。
実際に持ってみて分かった「地味に強い」実感
自分はアルトリア(MO)を1株44.32ドルほどで取得し、現在67ドル台まで上昇していて含み益は+53%になっている。正直に言うと、買った当初は「斜陽産業だし、そこまで期待していなかった」というのが本音だった。値上がり益を狙うというより、配当を受け取りながらのんびり持っておくくらいの温度感だった。
ところが実際に数年単位で保有してみると、半導体株やAI関連株のように急騰することはない代わりに、相場が荒れた局面でも他の保有銘柄ほど下げ幅が大きくならない。含み損を抱えた銘柄を見て気が滅入っている日でも、アルトリアの評価額はそこまで動じていない、という場面が何度もあった。「地味だけど強い」というのは、実際に数年持ってみて初めて実感が湧く感覚だと思う。
「利回り6.4%」を日本の個人投資家がそのまま受け取れるわけではない
ここで一つ、自分も調べ直すまで曖昧にしていたことがある。配当利回り6.4%という数字だけ見ると魅力的に映るが、日本の個人投資家がこの数字をそのまま手取りとして受け取れるわけではない。
米国株の配当には、日米租税条約に基づき米国側でまず10%の源泉徴収が行われる。そのうえで日本側でも通常20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税の合計)が課税されるため、合計するとおよそ30%近くが税金として差し引かれる計算になる。課税口座(特定口座・一般口座)であれば、確定申告で「外国税額控除」を申請することで、米国側で引かれた10%分の一部または全部を取り戻せる可能性がある。
ただし注意したいのは、NISA口座で保有している場合だ。NISA口座は日本国内の税金が非課税になる制度であり、そもそも日本側で課税されていないため「二重課税」の状態にはあたらない。つまり外国税額控除を適用する余地がなく、米国側の10%源泉徴収は取り戻せないまま差し引かれ続ける。「NISAなら配当は丸ごと非課税」というイメージを持っていると、米国株に関しては実質的に10%分だけ目減りすることになるので、事前に知っておいた方がいい。
「斜陽産業」と言われ続けて20年、なぜ勝ち続けるのか
今回海外の情報を読んでいて印象に残ったのは、アルトリアが2007年のリーマンショック前夜から一貫して「守りの銘柄」として推奨され続けているという事実だった。当時から「たばこ業界は先細り」と言われ続けて約20年、その間も他の景気敏感株が急落するたびに相対的な強さを発揮してきたという。
これは投資の世界でよくある逆説だと思う。みんなが「もうオワコン」と口を揃えて言うセクターほど、期待値が下がりきっているぶん株価にも悲観が織り込まれ、配当利回りは高止まりする。逆に「これから伸びる」と誰もが信じているセクターは、期待がすでに株価に上乗せされているぶん、下落局面での落ち込みも大きくなりやすい。「不人気だけど潰れない業種」を安く拾って配当を受け取り続けるというのは、地味だが再現性のある戦略なのだと、自分の保有経験からも感じている。
投資家目線:ポートフォリオの中でどう位置づけているか
自分のポートフォリオはNVDAやTSMのような成長株も持っているが、相場が荒れたときに全体の評価額の振れ幅を抑えてくれているのは、アルトリアのような値動きの穏やかな高配当株の存在が大きい。値上がり益で殖やす部分と、配当でキャッシュフローを積み上げる部分を分けて考えるようになってから、相場の上下に一喜一憂する頻度がかなり減った。派手な値上がりを狙う銘柄だけでポートフォリオを組んでいた頃と比べると、精神的な負担は明らかに軽くなっている。
💡 銘柄・企業の補足
・アルトリア・グループ(MO)は、米国最大手のたばこメーカーで「マルボロ」ブランドで知られる。近年は紙巻きたばこの需要減少を見据え、加熱式たばこや電子たばこなど次世代製品への投資も進めている
・「外国税額控除」は、海外で課税された税金の一部を、日本での所得税から差し引ける制度。確定申告(第二表・別表)での手続きが必要で、NISA口座の配当には適用できない
📊 加藤智也の分析メモ
「配当利回り6.4%」という数字だけを見て飛びつくのではなく、自分がどの口座(NISAか課税口座か)で保有しているかによって手取りが変わってくる、というのは今回改めて調べ直して腑に落ちた点だった。派手な成長株の含み益に目が行きがちだが、地味に持ち続けているアルトリアの安定感を数字で振り返ると、ポートフォリオの中での役割の違いを再認識させられる。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。保有銘柄・損益は執筆時点の個人の投資状況に基づくものであり、将来の成果を保証するものではありません。税制に関する内容は2026年9月時点の情報に基づいており、今後の制度改正により内容が変わる可能性があります。投資判断はご自身の責任で行ってください。


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