防衛費が気づけば10兆円超──「事項要求」160件超の裏側と防衛株を読む

防衛費が気づけば10兆円超──「事項要求」160件超の裏側と防衛株を読む - 加藤智也ノートのアイキャッチ画像 テーマ株・セクター

東洋経済オンラインを読んでいたら、「防衛省による前例なき160超の事項要求」という見出しが目に留まった。防衛費が「事項要求」という仕組みによって、表向きの数字よりかなり膨らむ見通しだという。財政の透明性の話でもあり、投資家目線では防衛関連株の話でもある。両方の切り口で見てみたい。

「事項要求」とは何か

防衛省が公表した2027年度予算の概算要求は、表向きは約8兆9000億円で過去最大の水準になっている。ただしこの中には、金額を明示しない「事項要求」が160件超も含まれているという。事項要求とは、まだ制度設計や仕様が固まっていないなどの理由で、具体的な金額を示さずに「予算を確保してほしい」とだけ要求する形式のことだ。

政府・与党内では、こうした事項要求の中身が年末の予算編成過程で具体化していく中で、最終的な防衛費は10兆円を超える見通しだとされている。表向きの8.9兆円と、実質的に見込まれる10兆円超との間には、1兆円以上のギャップがあることになる。

なぜここまで事項要求が増えているのか

今回の概算要求は、大きく3本柱で構成されているという。AIやドローンを活用した「新しい戦い方」への対応、長期化する紛争を想定した「持続反撃能力」の強化、そして生産基盤・技術・人材面での「防衛力の基盤強化」だ。

AIやドローンといった技術は変化のスピードが速く、年度初めの段階で具体的な仕様や金額を確定させるのが難しい面はあるのだろう。とはいえ、160件超という規模の事項要求を並べることで、結果的に金額の全体像が国会審議の時点では見えにくくなっているのも事実だ。

財政ガバナンス上の懸念

この点について、文民統制(シビリアンコントロール)の観点から疑問の声が上がっているという指摘もある。金額が明示されないまま予算の大枠だけが先に通り、具体的な使い道は後から年末の予算編成過程で決まっていくとなると、国会や国民が事前にチェックする機会が実質的に限られてしまう。

防衛費を増やすこと自体の是非はさまざまな立場があると思うが、増やし方の透明性が下がっていくこと自体は、財政規律という観点で気になるポイントだ。使い道が見えにくい予算が積み上がっていく構造は、防衛に限らずどの分野であっても健全とは言いにくい。

投資家目線で見る防衛関連株

一方で、個人投資家としてはこの流れを別の角度からも見ておきたい。防衛費が拡大方向にあるという事実は、防衛関連株にとっては継続的な追い風になる話でもあるからだ。

防衛関連株の代表格は、三菱重工業(7011)・川崎重工業(7012)・IHI(7013)のいわゆる「御三家」だ。川崎重工業は2026年4月に1株を5株に分割し、通期の利益予想を上方修正、増配も発表している。IHIも「航空・宇宙・防衛」セグメントが全社利益の8割以上を占める収益構造で、自衛隊の戦闘機用エンジンでは国内シェア約7割を持つとされる。2025年秋には1対7という大規模な株式分割を行い、個人投資家が買いやすい株価水準になった。

こうした株式分割の動きは、単なる株価の見かけ上の調整ではなく、防衛予算の拡大を背景に個人投資家の資金も呼び込みたいという各社の意図が透けて見える。

自分の立ち位置

正直に言うと、今のところ自分は防衛3銘柄をどれも保有していない。ポートフォリオは商社・メガバンク・海運・エネルギー関連が中心で、防衛セクターにはあえて手を出してこなかった。ただ、今回のような予算の拡大トレンドを見ると、国策として資金が向かう先の一つとして、頭には入れておきたいと感じている。

一方で、財政の使い道が見えにくくなっていくこと自体には、投資家である以前に一人の納税者として、素直に引っかかりを覚える。「防衛費が増えている」という事実と、「その使い道がどこまで見えているか」という話は、分けて考える必要があると思う。

まとめ

防衛費が事項要求という形で実質的に膨らんでいく構図は、財政の透明性という点では気になる話だ。それでも、資金がどこに向かっているかという事実そのものは、投資家として無視できない情報でもある。防衛関連株の動向は、今後も財政ガバナンスの議論と合わせて注視していきたいテーマだ。

💡 銘柄・企業の補足

防衛関連株の「御三家」と呼ばれる三菱重工業・川崎重工業・IHIは、いずれも防衛装備品だけでなく、航空機・エネルギー・インフラ関連など幅広い事業を持つ総合重工メーカーである点も特徴だ。防衛セグメントの比率は企業によって異なり、IHIは「航空・宇宙・防衛」セグメントの利益比率が特に高い構造になっている。

📊 加藤智也の分析メモ

「事項要求160件超」という数字を見て、予算の中身が見えにくくなっていく仕組み自体に興味を持った。投資家としては防衛費拡大という大きな流れを追いつつも、財政の透明性が下がっていく点は別問題として気にしておきたいと思う。防衛株についても、今後株式分割などで個人投資家が参加しやすくなる銘柄が増えていく可能性があり、値動きだけでなくこうした制度面の変化も継続してチェックしていきたい。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の政策や銘柄への投資を推奨するものではありません。防衛費・予算編成に関する内容は2026年9月時点の報道に基づいており、今後の予算編成過程で内容が変更される可能性があります。投資判断は自己責任で行ってください。

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