教育資金の一括贈与、実はもう終わっていた——令和8年度の相続・贈与税改正で今知っておくべきこと

教育資金の一括贈与、実はもう終わっていた——令和8年度の相続・贈与税改正で今知っておくべきこと - 加藤智也ノートのアイキャッチ画像 節税・制度活用

相続・贈与の税制について調べ物をしていたら、「祖父母から孫への教育資金の一括贈与が非課税になる」という制度について、てっきりまだ使えると思っていたのに、実は今年の3月末で申し込み自体がすでに終了していたことを知って驚いた。ニュースで大きく報じられなかったせいか、自分と同じように気づいていない人も多いのではないかと思い、令和8年度の相続・贈与税改正の内容を整理し直してみた。

「まだ使える」と思っていた制度が、実はもう終わっていた

教育資金の一括贈与に関する贈与税の非課税措置は、祖父母などの直系尊属が孫などに教育資金をまとめて贈与した場合、一定額まで贈与税がかからないという制度だった。令和8年度税制改正大綱で、この非課税措置は延長せず終了することが明記され、実際に教育資金管理契約の新規申し込みは令和8年(2026年)3月31日をもって終了している。つまり、この記事を書いている2026年9月時点では、すでに半年前に駆け込みのタイミングすら過ぎてしまっているということになる。ただし救いもあって、すでに制度を利用して信託銀行などに資金を預け入れている人については、受贈者が30歳になるまで、引き続き非課税で教育資金として使い続けることができる。新規に使えなくなっただけで、既存の契約が没収されるわけではない。

なぜ今、この制度が終了したのか

教育資金の一括贈与制度は、もともと「高齢者世代に偏っている金融資産を、教育費が必要な若い世代に早めに移転させる」という政策目的で導入された時限措置だった。実際、非課税枠を使って祖父母から孫へ数百万円単位の教育資金が移転するケースが相次いだ一方で、制度の恩恵を受けられるのはそもそもまとまった資産を持つ祖父母がいる家庭に限られるため、「格差を固定化するのではないか」という指摘も以前からあった。今回、延長せずに終了するという判断がされた背景には、こうした公平性への懸念と、当初の政策目的がある程度達成されたという判断があったと考えられる。

令和8年度改正で、他にも変わったこと

相続・贈与税の改正は教育資金の一括贈与だけではない。令和9年1月1日以降に発生する相続からは、「貸付用不動産」(賃貸アパートなど)の評価方法が見直される。これまでは相続税評価額を実勢価格より低く抑えられることが、賃貸物件を使った相続税対策として広く使われてきたが、改正後は取得から5年以内に取得・新築した貸付用不動産について、通常の取引価格を基準にした評価(取得価額をベースに地価変動等を考慮した金額の80%相当)に見直される。これまでの「不動産を買って相続税評価額を圧縮する」という古典的な節税手法が、少なくとも直近で取得した物件については効きにくくなるということだ。また、不動産小口化商品(少額から不動産に投資できる商品)の評価方法の見直しは2027年1月1日以後の相続から適用される。

「駆け込み」より「もう終わった後」への備えが必要な時代

今回自分が驚いたのは、この手の税制改正は「これから変わる」というニュースだけでなく、「実はもう変わっていた」というケースも多いという点だった。税制改正大綱は年末に発表され、実際の適用開始や申し込み終了は翌年度にずれ込むことが多いため、いつの間にか申し込み期限を過ぎてしまっていた、ということが起こりうる。相続・贈与のような「いつか使うかもしれない」制度ほど、こまめに最新情報を確認しておかないと、気づいたときには手遅れになっているリスクがあると実感した。

投資家目線:節税手法の”賞味期限”を意識する

賃貸不動産を使った相続税対策のように、長年「定番」とされてきた節税スキームでも、税制改正によって効果が薄まっていくことがある。これから相続対策を考える人は、特定の節税手法に頼り切るのではなく、NISAやiDeCoのような公的な非課税制度と組み合わせながら、定期的に最新の制度を確認する姿勢が必要になりそうだ。

💡 補足

・「直系尊属」とは、父母・祖父母など自分より前の世代の直系の血族のこと
・「税制改正大綱」は、翌年度の税制改正の方向性を示す文書で、毎年12月頃に発表される。実際の法律成立・施行はその後になるため、制度変更のタイミングには注意が必要

📊 加藤智也の分析メモ

「まだ使える制度」だと思い込んでいたものが、調べてみたら半年前にひっそり終わっていたという経験は、税制ニュースを追いかけているつもりでも意外と抜け落ちがあるのだと気づかされた。特に相続・贈与のように「今すぐ必要ではないが、いつか関係してくる」制度ほど、自分から定期的に確認しにいく姿勢が必要だと感じた。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談に代わるものではありません。相続税・贈与税に関する内容は令和8年度税制改正大綱に基づく2026年9月時点の情報であり、今後の法改正や運用により内容が変わる可能性があります。実際の税務判断は税理士等の専門家にご相談ください。

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