金は最高値から約25%下落——FRBの利上げ再開で「金の時代」は終わった? それでも中央銀行が買い続ける理由

マクロ・資産防衛

金の価格は、2026年1月28日に1オンス約5,600ドルという史上最高値をつけた。年初の時点では「金はどこまで上がるのか」という話題でもちきりだったと思う。ところがそこから春にかけて約25%下落し、9月30日時点では4,181ドル前後で推移している。

そして9月、米国の中央銀行にあたるFRBが2023年以来となる利上げに踏み切った。「金利が上がると金は下がる」というのは、投資の教科書によく書いてある話だ。では、金の時代はもう終わったのか。今回は、金と金利の関係と、それでも金を買い続けている「ある買い手」の存在を整理してみた。

金は「利息がつかない資産」

まず基本から。金は持っていても利息や配当を生まない。株なら配当、債券なら利息が入ってくるけれど、金はただそこにあるだけだ。

だから金利が高くなると、「利息がもらえる国債を持った方が得なのでは」と考える投資家が増え、金の魅力は相対的に下がる。逆に金利が低いときは、利息がつかないことのデメリットが小さくなるので、金が買われやすくなる。「金利が上がると金は下がる」と言われるのは、この比較があるからだ。

2022〜2025年は「教科書を無視した」相場だった

ところが、ここ数年の金はこの教科書どおりに動かなかった。米国の金利が上がっている時期にも、金は最高値を更新し続けた。J.P.モルガンの調査でも、2022年以降、金利(インフレを差し引いた実質金利)と金価格の伝統的な関係が崩れていたことが指摘されている。

金利が上がっているのに金も上がる。市場は、たまに教科書を読んでいない。

2026年、久しぶりに「教科書が戻ってきた」

ところが今年は様子が違う。FRBは9月16日に政策金利を0.25%引き上げ、3.75〜4%とした。利上げは2023年以来で、年内にもう一度利上げする可能性も示している。議長のウォーシュ氏は会見で、インフレが「高すぎる状態が長すぎる」と語った。

長期金利も大きく上がっている。米国の30年国債の利回りは9月29日に一時5.6%を超え、2002年以来の高水準をつけた(この金利上昇の日本への影響は、住宅ローン固定金利の記事でも書いている)。そして金は、最高値から約25%下がった。今年に関しては、市場は久しぶりに教科書を読んでいたように見える。

もう一つ意外だったのが、中東情勢との関係だ。2月28日に米国とイスラエルがイランを攻撃し、ホルムズ海峡の通航が激減した。「有事の金」という言葉があるように、戦争や危機のときは金が買われると言われる。ところが金の最高値はその1カ月前の1月で、戦争が始まった後の春にかけて、金は(ドル建てで)下がっていった。「有事の金」も、いつも教科書どおりに動くわけではないらしい。

それでも金が崩れない理由:「売らない買い手」がいる

とはいえ、25%下がったとはいえ、金は4,000ドルを超える歴史的な高値圏にある。ここまで値段を支えている大きな存在が、世界の中央銀行だ。

各国の中央銀行は、2022年から2024年にかけて毎年1,000トンを超える金を買い、2025年も863トンを買った。これは世界の金鉱山の年間生産量の約4分の1にあたる量で、金額にすると年600〜850億ドル規模になる。

中央銀行は、何十年という単位で外貨準備として金を持つ。FRBが0.25%利上げしたからといって、すぐに売るような買い手ではない。個人投資家やファンドが金利を見て売り買いしている横で、ひたすら買い続ける大きな買い手がいる。これが、金利が上がっても金が大崩れしない理由の一つだと考えられている。

加藤智也の視点:「化けたら繰り上げ返済」のつもりで買った金

実は私も、金・銀・プラチナを少額だけ現物で持っている(月次ポートフォリオでは全体の0.3%)。買ったのは数年前。「金価格が上がり続けている」というニュースを見たのがきっかけだった。

正直に言うと、私は投資では流行りのものやトレンド商品にはあまり興味がないタイプだ。それでも少額だけ入れておいて、もし化けたら住宅ローンの繰り上げ返済のタイミングで足しにしよう、くらいの軽い気持ちで買った。住宅ローンは今、11年目で変動金利に移っているので、繰り上げ返済の「足し」になるものがあるのは心強い。

そして今の評価損益は、金が+35.7%、プラチナも+35.7%、そして銀は+73.1%。ニュースでは「金は最高値から25%下落」と言われているのに、私の金はまだしっかりプラスだ。理由は単純で、最高値の近くではなく、数年前のもっと安い時期に買っていたから。加えて、私が持っているのは円建ての金なので、円安が進むと円での値段は下がりにくい、という面もある。ちなみに10月1日のSBI証券での金の売却価格は、1グラム21,223円だった。

結果的に「少額だけ」「軽い気持ちで」買ったものが一番素直に増えている、というのは少し皮肉な話だ。ただ、ここから先も同じように上がるとは限らない。金は配当も利息も生まないので、値上がりしなければリターンはゼロ。だからこそ私は、ポートフォリオの主役ではなく「おまけ」の位置づけにしている。

この先どうなる? 考えられる3つのシナリオ

  • シナリオ1:利上げが続き、調整が長引く FRBが追加の利上げに動き、米国の金利が高止まりすれば、金には逆風が続く。教科書どおりの展開
  • シナリオ2:中東情勢やドルへの不安で再び上昇 情勢の悪化やドルへの信認の低下が意識されれば、金に資金が戻ってくる可能性がある
  • シナリオ3:中央銀行の買いが下値を支え、横ばい 金利の逆風と中央銀行の買いが綱引きになり、高値圏でのもみ合いが続く

どれになるかは分からないけれど、金が「教科書どおり」に動く年もあれば、まったく無視する年もある、ということは今年よく分かった。金を持つなら、値動きを当てにいくより、ポートフォリオの一部として少しだけ持っておくくらいがちょうどいいのかもしれない。

💡 補足

・金の国際価格は1トロイオンス(約31.1グラム)あたりの米ドルで表される。日本で買う金の値段は、これを円に換算し、手数料などを加えたもの
・ドル建ての金価格が同じでも、円安になれば円建ての金価格は上がり、円高になれば下がる
・最高値の数字は情報源や時間帯によって5,590〜5,600ドル前後と少し差がある
・金は配当や利息を生まない資産で、売却益には税金がかかる(現物の金の売却益は原則として譲渡所得)

📊 加藤智也の分析メモ

「金利が上がると金は下がる」という教科書は、ここ数年は通用しなかったのに、今年は久しぶりに当てはまった。相場の教科書は、いつ有効でいつ無効になるかが分からないところが難しい。私自身は、金を「当てにいく投資」ではなく、「化けたらラッキー」の保険くらいに考えている。住宅ローンの繰り上げ返済という具体的な使い道があるからこそ、少額でも持っていて良かったと思える。金の値動きに振り回されないためには、この「持つ理由」をはっきりさせておくのが一番大事なのかもしれない。

※本記事は報道・公表資料をもとにした2026年10月1日時点の情報提供を目的としており、特定の銘柄・金融商品への投資を推奨するものではありません。金価格は為替や金利、国際情勢によって大きく変動します。投資判断はご自身の責任でお願いします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました